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オバマとアメリカの教育改革

オバマ大統領が、バージニア州ウェイクフィールド高校で行った演説を聴いた(英文原稿)。聞いていて、とても悲しくなった。それはオバマが話す内容そのものと言うよりも、彼がいま話しかけている相手のレベルの低さに悲嘆してしまったのである。それはこの高校を始め、アメリカの初等教育全てが抱える課題でもある。

オバマは、マイケル・ジョーダンを例に挙げながら、失敗を恐れるな、次に頑張れ、そのための努力を惜しむなと、目の前にいる高校生と、テレビや新聞を通して向こうにいる全米の生徒に勉強することの大切さを語りかける。その場にいる高校生は真剣に耳を傾けている(ように見える)が、しかしここには、多くの日本人にとっては何ら目新しいメッセージはない。日本の小中学校に通っていれば、フツーに経験してきたことばかりなのだ。百ます計算とか、公文式とか、漢字練習帳とか、人によってさまざまなやり方であっても、反復練習という基本は変わらない。それが日本の教育の(色々と批判はあっても)強みなのだ。日本にはマイケル・ジョーダンは生まれなかったが、あの桜木花道がいるではないか。シュート2万本の末に体得した「左手はそえるだけ」。彼のこの経験は実は日本のバスケ、じゃなくて教育そのものをズバリ表現しているのである。

アメリカの初等教育のレベルの低さは、そもそも学習時間の少なさにある。それも、休み過ぎとしばしば批判されるヨーロッパからも、思い切り皮肉られるほどに。時間をかけるということに目を向けず、その他の小手先の政策にばかり取り組んできた結果が、現在のこの惨憺たる有様だ。そしてここには、少なからず経済学者も手を貸してきた。Economics of Education は既に一つの分野として成り立っているが、その中のトピックの一つに、クラス人数とテスト結果の関係を分析したものがある。要は、その他もろもろの条件が同じならば、少人数クラスにするほどテスト結果が高くなるという因果関係を示したものであり、このトピックに関する論文がそれこそごまんとある。

だから何?というのが率直な感想だ。そりゃあ、大人数よりは少人数の方がいいと思うよ。でも、それが教育の本質ではないだろうよ、と思うわけだ。でもこれまで教育業界にどっぷりだった人や、教育研究にどっぷりだった研究者は、恐らくそういうことを感じないのだろう。むしろ外部にいる人間が、それちょっと違うんでないかい?と言うべきなのだ。実際、マルコム・グラッドウェルが新著『天才! 成功する人々の法則』の中で、アジアの稲作地域で育った子は数学能力が高いという話をしているが、ここでもその根底にあるのは、勉強に時間をかけるということだ。日本人として共感するのはまさにそういうことなのである。

アメリカの子供たちよ、学問にはやっぱり王道はないのだよ。そこから教えないといけない大統領に同情し、こんなことまで大統領の仕事なのかと痛々しい思いで演説を聴いたのだった。



2009/09/09(水) | President | トラックバック(0) | コメント(0)

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