若き経済学者のアメリカAmerica ≫ メガチャーチの衝撃

メガチャーチの衝撃

見ておきたいアメリカ社会というものはいくつもあるのだが、コミュニティという視点でみると、以前書いたように、渡辺靖『アメリカン・コミュニティ』に挙げられている9つの事例はいずれも大変に興味深い。その一つ、メガチャーチを訪れることができた。




メガチャーチとは一般的に、約2,000人の信者が定期的に集まるような大規模な教会を指す。ボランタリーな運営というよりはむしろビジネスライクな経営が特徴的であり、マーケティング戦略に長け信者数を急増させている。クローズアップ現代でも取り上げられたように、その集票基盤でもって政治に対する影響力も大きい。日本人が持つ「教会」のイメージを遥かに凌駕したこの巨大教会は、もちろん初めて訪れる僕にとって驚きの連続だったのである。

今回訪れたのは約8,000人が通う教会。老夫婦の次女とその家族が通う教会だ。メガチャーチの中では中規模にあたるのだろう。訪れた感想をいくつかまとめてみる。

1.規模はショッピングモール ~そこに神はいるのか?
車でしばらく走ると突如、巨大な建造物が見えてくる。平屋建てであるため威圧感はないものの、駐車場の広さもあり相当に広大な敷地である。そして駐車するための車の列とそれを誘導する何人もの係員。教会に来たという実感はまったくといっていいほど、ない。宗教という語感に実体がともなわない「ライト」な感覚。これが現代宗教の特徴なのだろうか。

P1010042.jpg


2.中に入ればシネマコンプレックス ~古臭い伝統の排除
きれいに整備されたエントランス。しかしここにも「キリスト教」をイメージさせる十字架やイエスやマリア像といったものは何一つない。もちろんステンドグラスもパイプオルガンもない。目にするのは普通にモダンな内装の数々だけなのである。

P1010037.jpg


3.フィットネスジムばりのチェックイン ~あまりにも機械的な
信者の人たちがまずすることはチェックイン。何でそんなことする必要があるの?というのは愚問。(教会)経営者のマーケティングとしては信者の出席率は不可欠の経営指標になるはずだ。こうした個人データが、恐らくは各種プログラムへの招待であったり、寄付の依頼であったり、新規信者の獲得へと活用されているのであろう。教会にいることを忘れてしまうほどビジネスライクなのであった。

P1010038.jpg


4.託児所と子供向けプログラムの充実 ~若い子には聖書を読ませよ
チェックインと同時に乳幼児は託児所に預けることになる。若い夫婦とその子供たちが多く来ているため、託児所も年齢別に細かくクラス分けされている。3歳くらいまでは単に子供を預かるだけだが、4歳を過ぎたクラスでは子供向けプログラムが実施されているとのこと。その充実ぶりが顕著なため、伝統的な教会に通う夫婦であっても、子供だけはこうしたメガチャーチに通わせることもあるという。


5.ミュージアムショップならぬチャーチショップ ~ドルを稼ぐイエス
エントランス脇にはショップが併設。聖書や絵本から、各種アクセサリーや洋服、おもちゃまでが並ぶ。しかし、"Jesus Loves Me Berry Much!" のイチゴTシャツには、イエスも苦笑いするしかないだろう。

P1010041.jpg


6.ロックで幕開け ~ここは教会なのか、武道館なのか?
日曜午前9時、いよいよ始まる。会場はこれまた映画館かと思わせる広さ。ステージやシートの造りもまさに映画館そのものである。約1,000人は収容できるほどの広さだが、それでも8,000人の信者には到底足りない。クリスマスのミサを合計8回開催し、毎週日曜日も時間を変えて数回開催するのも頷ける。ちなみに、最初に登場したのは3人組のバンドと思しきグループ。いきなりロックが流れ会場の雰囲気が一変する。最前列の人たちなどは手を振り、頭を振り、腰を振り・・・。歌詞は "God has come" とか "King of Lord" とかなわけで、なぜあんなにノレるのかは理解しがたい。ちなみに、歌の半分はオリジナル、残りは替え歌といったところ。15分は続いたと思われる。


7.牧師の説話というより先輩の軽快なトーク ~僕の軌跡、あなたの奇跡
バンドが退場し、今度は牧師の登場だ。が、彼がまたカジュアルなのである。顔はなかなかに端正だが、着ているものはピンクのポロシャツにカーキのパンツ。ショッピングモールに普通にいそうな40代男性。そんな彼がゆっくりと話し始める。自分が神の存在に気づいた瞬間とか、その後一変した人生とか。聖書にあるような小難しい話はまったくなく、あくまでシンプルに易しく優しく話しかけてくる。その後の話は科学について。曰く、この宇宙に太陽系と地球が生まれた奇跡。人類というミラクル。そのメッセージは一言で言えば、「パネェくらい、創造主ってすげぇよ!」なのだ。


8.集いの後はコーラ片手に団欒 ~そして神はいなくなった
説話の後は再度バンドが登場し、今度はポップで締めくくる。そして約40分の集いは無事終了した。終わった後は、それぞれコーラ、コーヒー、サンドイッチをつまみながら友人たちと軽くおしゃべり。スタバがあってもおかしくない雰囲気のロビーだが、そんなことするわけがない。コーヒーショップも重要な収益源だからね。

P1010044.jpg


こうして僕の初めてのメガチャーチ体験は終わった。しかし最後まで神の存在を感じることはなく、聖書や牧師の言葉にありがたみを感じることもなく、あくまでも淡々とプログラムを消化したような気がしてならない。信者の人たちはこうした教会のどこに価値を感じているのだろうか。いやむしろ、そんな重々しい価値すら感じなくて済むという点こそが、極めて現代的な新たな宗教価値と言えるのかも知れない。







2010/01/08(金) | America | トラックバック(0) | コメント(2)

«  |  HOME  |  »

makino

『No title』

アメリカ旅行もしましたが、教会には行かなかったので、こんな風になっていたとは驚きです。

2010/01/12(火) 12:04:23 | URL | [ 編集]

tamago

『Re: No title』

おひさしぶり!ホント驚きましたよ。普段都市部で見ることはないので、やっぱりアメリカ郊外ならではの風景なのだと思います。

2010/01/12(火) 22:12:53 | URL | [ 編集]

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL
http://theyoungeconomist.blog115.fc2.com/tb.php/142-8f12ec88
 |  HOME  |