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欲望という名の資本主義

佐伯啓思の一冊。<欲望>は新たなフロンティアを探索し続けることで、資本主義そのものを発展させてきた。香辛料が必要という切な願いや、もっと金銀をという欲、そして領土をさらに広げたいという望みまで、大小様々な<欲望>を積み込んで、ヨーロッパ諸国は大航海時代へと漕ぎ出していった。当時のフロンティアは文字通り、誰もまだ見ぬ「新大陸」だ。そんな危険と隣り合わせの航海は、小口出資を募って成立した事業であり、これがその後の株式会社へとつながっていく。

「新大陸」アメリカに着いてからは東部を開拓して力を蓄え、ついには英国から独立を勝ち取る。そしてそのフロンティア精神は、次に大陸西部へと向けられていった。ゴールドに対する<欲望>のラッシュが起こり、西部入植が加速する。そこに事業機会を見出した資本家は、その旺盛な起業意欲で大陸横断鉄道を完成させ、さらに資本を蓄えていった。その一人が大学にその名を残すスタンフォードだ。しかし大西洋への到達は、新大陸においてもついにフロンティアが消失したことを意味していた。


「欲望」と資本主義―終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)
佐伯 啓思
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だが、岩井克人も書いているように<欲望>のフロンティア探索は終わらない。次に<欲望>が向かったのは地球の外だった。その象徴としてのアポロ計画はしかし月面着陸で興奮のピークを迎えた後、次第にしおれていく。当時の若者が熱狂した映画『スターウォーズ』の世界や、『ガンダム』のスペースコロニーを本気で信じる人は今はもういない。海の向こう、山の向こう、そして空の向こうへと<欲望>を拡張させてきた僕らはついに、「外部」にはもうフロンティアが存在しないことに気づいてしまったのである。

だから<欲望>はその拡張を止めたのか?歴史はそのまったく逆で、<欲望>は「内部」へ向けて加速したのだった。美容やファッション、自己啓発までをも含めて内面を磨きたいという現代にも脈々と続く<欲望>はまさにその表れである。そして、内向きの<欲望>は、個々人の僅かな差異を際立たせることで、人工的に新たなフロンティアを作り出し続けている。その再生産に今のところ終わりは見えない。

2010/01/23(土) | Others | トラックバック(0) | コメント(0)

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