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ポーランドのヨハン

この5月に卒業する学部生の中に、とくに仲良くしてきた一人がいる。彼は学部3年生のうちから大学院の経済学コースワークを取り優秀な成績を収めた俊才だ。数学のテクニックに長けるのみならず、実際の経済政策や世界の経済史に対する関心も高く、卒業論文ではアフリカの経済成長についてまとめていた。毎日夜遅くまで図書館に篭り、ストイックなまでに勉学に勤しむというタイプだ。

と同時に、彼はイケメンでもある。いかにも賢そうな端正な顔立ちに、切れ長の目が涼しい。女性にもモテるだろうに、女の子を追いかけているなんてことは見かけなかった。だから僕なぞは「テニスサークルにも入ってみたら」とか「たまには合コン行けば」とか、つい俗なことを思ってしまうわけである・・・。そんな目先のことには見向きもせず、彼は遥か遠くにある大きな目的を一人見据えているようでもあった。しかし結局僕には、彼が見ているものを見ることはできなかったのかも知れない。彼の思いつめた様子は浦沢直樹『MONSTER』のヨハン・ヴィルヘルム・リーベルトを彷彿とさせ、僕は敬意と畏怖を込めて彼をヨハンと(心の中で)呼んでいた。

ヨハンの両親はポーランドからの移民。祖父母はまだポーランドで元気にしているようでよく電話をしていた。僕には全く聞き取れないあの言葉が彼の国の言葉なのだろう。教育熱心な家庭に育ったのは明らかだが、ここで想起するのがやはり教育を真剣に考えていたユダヤ人の彼女の家庭だ。彼らに共通するのは、自分の土地や財産を収奪されたという歴史だろう。そうした経緯が、持ち運びでき他から奪い取られることがない頭脳への教育投資へと駆り立てたのは想像に難くない。数多くの学部生の中にあって、この彼女と彼の勉強に対する姿勢は群を抜く。そうした意識をかいま見るたびに、その背景にある彼らの歴史を思わざるを得ない。

学部卒業後のヨハンは、てっきり経済学Ph.D.に進むのだろうと僕は思っていた。だが、彼は一度実家に帰るという。しかし、とくに働くというわけでもないようだ。彼の口ぶりからすると少しの間ポーランドで暮らすことを考えているのかも知れない。恐らくは彼だけが見ている、大きな目的のために。彼はきっと何かを成し遂げるだろう。僕はそんな彼に会いに、いつかポーランドに行ってみたいと思った。



2010/05/12(水) | Class | トラックバック(0) | コメント(0)

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