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社会起業家の先駆け Teach For America

論文で取り上げられていた、米国最大のチャータースクールプログラム KIPP(Knowledge Is Power Program)。そのKIPPを語る際に外せないのが、1990年設立のNPO、Teach For America である。KIPPを設立した二人は、この Teach For America の卒業生でもあるのだ。以下が英治出版による、Teach For America の概要紹介だ。

【ティーチ・フォー・アメリカとは】
・ティーチ・フォー・アメリカ(Teach For America:TFA)は、教育機会の格差の解消を目的とする事業。大学卒業後の若者が2年間、教育環境の劣悪な地域の公立学校に赴任して子供たちに授業を行っています。
・厳しい選考をくぐり抜けて採用された若者による教育効果はめざましく、学力向上に大きく寄与しています。また、「教える体験」(リーダーシップ発揮の機会)を通じて若者たち自身も成長し、社会的関心と高い志、そして思いやりをもって社会人としてのキャリアを踏み出します。卒業生たちの進路は教育関係から政官界、法曹界、ビジネス界まで多種多様。ティーチ・フォー・アメリカは、子供たちだけでなく、次世代を担う人材をも育成しているのです。

【アメリカの若者の理想の就職先に】
・創業18年を経た現在では、ティーチ・フォー・アメリカのプログラムには毎年、ハーバード大学やイェール大学などトップクラスの大学卒業生たちが殺到。大学生の「理想の就職先」ランキングで第10位にランクインするなど、社会現象と言えるほどの人気と注目を集めています。

【世界に広がる「若者による教育改革」】
・こうしたティーチ・フォー・アメリカの活動は、教育の抜本的な解決策を示すものとして各界で高く評価され、クリントン・グローバル・イニシアティブによって海外展開も決定。これまでにイギリス、インド等でも同様の事業が立ち上がっています。

【ティーチ・フォー・アメリカの「Theory of Change(変革理論)」】
・ティーチ・フォー・アメリカは、全米トップレベルの人材を最底辺の教育環境にある層の教育にあてることにより、以下2つの方向からの社会変革を推進しています。
(1)貧困層児童の学力向上・教育機会格差の是正
(2)ニューリーダーの育成(教育体験を通じて社会的関心の高いリーダー人材が養成される)

【卒業生の進路】
・ティーチ・フォー・アメリカの卒業生14,400人のうち3分の2はまだ教育の仕事に従事しており、自ら教育ベンチャー企業やチャータースクール等を立ち上げる例も多数見られます。また、卒業生のうち200人は連邦政府議会、政府職員、議員の政策アドバイザーなどになっています。



社会起業家の先駆けとしても注目され、ハーバード・ビジネススクールのケーススタディにも取り上げられた Teach For America とその創業者 Wendy Kopp。彼女が出した自伝が "One Day, All Children: The Unlikely Triumph of Teach for America and What I Learned Along the Way"だ。本書を読んで印象に残ったのは、彼女の情熱・アイデア、そしてそれを実践する行動力、周りの共感と支援を獲得していくプロセス、では実はない。もちろんそれもあるのだが、それ以上に彼女が真剣に願ったアメリカの初等教育の未来像が心に刺さる。それがまさに書名であり、本の最初の一文にも記されている。"One day, all children in this nation will have the opportunity to attain an excellent education." どこの発展途上国にも当てはまるであろうこの言葉が、超大国アメリカ自身に向けて発せられているという現実。それを目の当たりにした。

もう一つ彼女に学ぶのは "Think Big." 彼女はプロジェクト開始当初から Big Picture を描いていた。小さく始めて少しずつ育てるという考え方もあろうが、彼女はそれには与さない。だからこそ大統領に提案書を送り、大企業CEOには直接面会して資金援助を要請する。そんな大胆でワイルドでセクシーなプロジェクトだったからこそ、人々を惹きつけ次第に社会的運動と呼べるようなうねりを巻き起こす。以前書いた、 "Think Different." と "Think Right." にこの "Think Big." を加えた3つが、変革のリーダーシップと言えるものなのかも知れない。

そんな彼女の自伝は昨年日本でも訳書『いつか、すべての子供たちに』として出版された。社会的事業を含めた起業全般、その他資金調達・組織運営等に興味があれば面白く読めるだろう。それ以上に Teach For America の事業内容に関心があるならば渡邊奈々『社会起業家という仕事』が、そして教師が赴任した先での実際の奮闘については "Relentless Pursuit: A Year in the Trenches with Teach for America" が詳しい。







2010/07/30(金) | Education | トラックバック(0) | コメント(3)

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ロンドン在住学生

『TFA』

最近TFA関連情報がツイッター等でも流れてきてました。

TFAがうまくいっているという記事とうまくいっていないという記事の両方を目にした気がするのですが(どこの記事だったかは忘れてしまいました…)、実際どうなのでしょうか。総じて好意的な評価なのでしょうか。何を基準にするかでうまくいっているかどうかは変わるとは思いますが…。

あとは、社会企業家と呼ぶ時、どのビジネスも大抵の場合、社会の役に立ってるはずなのに、わざわざ社会を強調するのはなぜだろうか、あるいは「普通の」企業家との違いは何だろうかとか、格差 inequality と差(?) differential の表現の違い(前者は equal たるべしという価値判断が入っているような気がして引っかかるのです)とか、特に、途上国関連のビジネスの場合、こういう表現が目立つのでどうも気になっています(最近だとグラミンとユニクロの合弁など)。

2010/08/01(日) 20:00:52 | URL | [ 編集]

tamago

『Re: TFA』

> ロンドン在住学生 さん
こんにちは。TFA に関しては僕も各種メディアでの報道内容くらいしか知らないですね。あと、「社会」起業家と強調される理由については、ホリエモン氏がブログエントリ『社会起業家とか眠たいこと言ってんじゃねーよとか私は思うけど。』でバッサリ書いていますね。
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10414657550.html

2010/08/03(火) 02:29:58 | URL | [ 編集]

ロンドン在住学生

『No title』

リンクありがとうございます。前回のコメントは長々と書きすぎました…。失礼しました。m(_ _)m

2010/08/04(水) 18:48:03 | URL | [ 編集]

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