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チャータースクール効果3

チャータースクール効果を推定した最新の論文が、Angrist et al (2010a) と Angrist et al (2010b)。ボストン北部郊外で2004年に開校したチャータースクール KIPP Academy Lynn (中学校)を対象としたもの。1校のみからデータを取っているため、他校にも当てはまるような普遍性には乏しいが、それでも注目すべきなのは KIPP (Knowledege Is Power Program) が現在全米で82校を展開する最大のチャータースクールプログラムだという点である。プログラムが標準化されているため、KIPPネットワーク内においては、基本的な運営方針や年間授業日数等ほぼ同じだ。そのため、地域差はもちろんあるのだが、ボストンと同じような推定結果が他のKIPPスクールにもある程度当てはまるだろうという議論である。

本論文もこれまでと同様、入学抽選結果を IV (Instrumental Variable) として用いている。推定結果は、在学一年間の効果で数学テストでは標準偏差を0.35、英語テストでは0.12高めることが示される。この値は、Abdulkadiroglu et al (2009) のそれに近く、両論文ともにボストン周辺を対象にしていること、かつ KIPP Lynn も Abdulkadiroglu et al (2009) の9校も、人気校(ブランド校)という点で学力が近いと想定できることとも整合的である。その他 Angrist et al (2010b) では、学力別サブグループ毎の推定も行い、とくに英語テストにおける全体の学力向上は、その大部分が学力が低い生徒の上昇によるものだと指摘している。

これまでの論文でも見たように、従来校と比べてチャータースクールの効果があることは確かなようだ。一方で、従来校よりも学力向上という結果に結びついているチャーター校もあれば、ほとんど差がないところもある。チャータースクールも約20年の歴史を経て、いよいよこれから本格的に、生徒とその両親に選ばれる時代を迎えるのだろう。その過程で実績と人気をさらに伸ばしていく学校もあれば、淘汰されるスクールも出てくる。オバマが言う "new, high-quality charter schools" もそういった展開を見据えているのだろう。学校教育を囲む市場環境にも、アメリカならではの熾烈な競争と、そこから生まれるダイナミズムを見るようである。


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J. Angrist, S. Dynarski, T. Kane, P. Pathak, and C. Walters (2010a), "Inputs and Impacts in Charter Schools: KIPP Lynn", (AER P&P)

J. Angrist, S. Dynarski, T. Kane, P. Pathak, and C. Walters (2010b), "Who Benefits from KIPP?", (NBER Working Paper)



2010/07/28(水) | Economics | トラックバック(0) | コメント(0)

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