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『アフター・アメリカ』

この冬休み中に取り組んでいるのは、英語以外にもある。それは、アメリカ社会をもっとよく知るということだ。これから数年間を過ごすこの国の社会、文化、歴史、経済、政治について、知っておきたいことは山とある。アメリカ論というと様々な意見が飛び交いそうだが、まずはそれだけ多様な意見や視点があるということだけでも抑えておきたい。

そのため、今は面白そうな書籍をまとめて読み進めている。日本で大量に買い込んできて大正解!そのせいで荷物は重くなり、周りからは「アメリカ行くのにそんなに日本語の本が必要なワケ?」と白い目で見られたが、必要なものは必要なのだ。


その中でも抜群に面白いのが、渡辺靖の一連の著作。まずは、2004年のデビュー作である『アフター・アメリカ -ボストニアンの軌跡と<文化の政治学>』。同年のサントリー学芸賞他、数々の賞を受賞して話題になった一冊だ。(著者インタビューはコチラ))

本書では、ボストン界隈の上流階級「ボストン・バラモン」と、移民階級「ボストン・アイリッシュ」という、対照的な2つの家族を題材に、アメリカ社会の変容が映し出される。ハーバードPh.D.(社会人類学)の著者が、「『地を這うような』アプローチ」(受賞コメント)で取り組んだ博士論文を土台とした力作だ。

とくに興味深く読めるのが、ボストン・バラモンが時代とともに変化を余儀なくされていく点だろう。アメリカ大統領を輩出し、ボストン地域のみならず、アメリカの権威でもあったこの階級は、その特権階級のみで閉鎖的な社会を築き上げ、それを守りその中で生きてきた。しかし、その階級もゆっくりとではあるが着実に没落し、大衆化していく。婚姻関係がいい例だ。上流階級同士の結婚しか認められなかったものが、次第にコミュニティ外との結婚が増え、そして閉鎖性が崩れていく。

バラモン階級との関係が強いハーバード大学のPh.D.課程に在学中だったとはいえ、この閉鎖的なコミュニティの堅牢な扉を日本人が開けた、というのがまずもって大きな驚きだ。と同時に、婚姻関係等も含め、極めて個人的でデリケートな意識も、丁寧なインタビューで掘り下げている点に、本書の凄味がある。うがった見方をすれば、日本人学生のインタビューを受け入れるほど閉鎖性が希薄になった、ということなのかも知れないが、それでもなお、この国の一時代を築き繁栄を謳歌した階級のリアルな描写に最後まで惹きつけられた。


アフター・アメリカ―ボストニアンの軌跡と<文化の政治学>




2008/12/29(月) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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