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隣の人種をどれくらい気にしますか?

地域ごとに大きく異なるデモグラフィック属性は、もちろん教育レベルばかりではない。アメリカにおける典型例は人種構成であろう。一言で言えば、白人の住む住宅街と、黒人の町がはっきりと分かれている。この問題は過去にも多くの経済学者や社会学者の注目を集めたものであり、なぜこうした区分けが自然発生的に現れたのか、の説明が試みられた。その中でもとくに後年への影響が大きかったのが、2005年ノーベル経済学賞受賞の Thomas Schelling による "Dynamic Models of Segregation" (1971) と "Micromotives and Macrobehavior" (1978) である。このモデルでは、決して人種差別者ではない「寛容な」人々が混じり合った地域においても、ちょっとしたきっかけでそのバランスが崩れると、白人と黒人との分離が急速に進行することを示したものである。このモデルは直感にも合うものであったが、ただ実証的に検証しやすいものでは決してなかった。

さて、Card et al (2008) は、この人種分離という現象を、Black (1999) と同様に、regression discontinuity design を用いて分析したものである。マイノリティーの構成比率がある一定の値 ("tipping point") を超えると、その地域に残っていた白人家族も一斉に地域を去り出すという現象に注目し、その値がどの程度なのかを地域別に推定している。アメリカの8都市における、1970-2000年までのデータを用いたその推定値は、5-20%のレンジがあるものの、ロサンゼルスやサンアントニオの値が高く、ポートランドやピッツバーグの値は低いという結論は妥当であるように思う。とくに各市の都市・住宅整備に対する政策含意が大きい論文と言えるだろう。

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Card, D., A. Mas, and J. Rothstein (2008), "Tipping and the Dynamics of Segregation", (QJE)

Schelling, T. (1971), "Dynamic Models of Segregation", (Journal of Mathematical Sociology)

Schelling, T. (1978), "Micromotives and Macrobehavior"



2010/08/20(金) | Economics | トラックバック(0) | コメント(0)

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