若き経済学者のアメリカEducation ≫ 学校教育と逆選択

学校教育と逆選択

経営学者ピーター・ドラッカーは、ビジネスマンや女子高生マネジャーの啓蒙にばかり忙しくしていたわけではない。彼は「絶えず教育に立ち返ることが個人のイノベーションを促進する」と、教育全般に渡ってその重要性を指摘し続けた。しかし残念ながら公教育の現場というものは、洋の東西を問わずイノベーティヴとは縁遠い世界でもあったりするのだ。


経済学の優れた啓蒙書の一つとして "Naked Economics" が挙げられるだろう。本書では、externality, adverse selection, price discrimination, public goods, productivity といった経済用語が身近な例を通じて説明されていく。その中でとくに学校教育と関連が深いのが、adverse selection (逆選択) の問題だ。アメリカの公立校の教師の給与は、日本もほぼ同様と思うが、学歴および教師としての経験年数によって決定される。つまり教師としての「パフォーマンス」には依存しない、いわゆる年功序列型の給与体系となっている。そうなると、優秀な教師ほど自分の能力に見合った報酬がもらえる他の業種・職種に転職しようというインセンティブが高くなる。そして実際に、優秀な教師から学校を去り、残念ながらそうでない教師が学校に残るという結果となっているわけだ。アメリカの初等教育の貧弱さの原因の一つは、優れた教師が圧倒的に不足しているということであり、逆にそこに事業機会を見出したのが、以前書いたティーチ・フォー・アメリカ(TFA)なのである。

本書に次のような印象深い記述がある。日本では「学校の先生」という職業が今も昔も一定の人気を保っている。一方のアメリカでは、そもそも教職そのものに魅力を感じる人が少なく、そのうえ一旦教職に就いてもさっさと見切りをつけ転職していくのが極めて早いのである。生徒側でもそれをよく分かっているから、最後まで学校に残る(しか道がない)先生をそういう目で見るし、だから初等教育の現場で人生の師となるような先生と出会いました、なんて話はとんと聞いたことがない。いや、日本にだってもうないかも知れないんだけどね・・・(多分)。

The theory is interesting; the data are amazing. When test scores are used as a proxy for ability, the brightest individuals shun the teaching profession at every juncture. The brightest students are the least likely to choose education as a college major. Among students who do major in education, those with higher test scores are less likely to become teachers. And among individuals who enter teaching, those with the highest test scores are the most likely to leave the profession early.(中略)Any system that pays all teachers the same provides a strong incentive for the most talented among them to look for work elsewhere.




2010/10/07(木) | Education | トラックバック(0) | コメント(0)

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