若き経済学者のアメリカBooks ≫ 村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

「もし僕の墓碑銘なんてものがあるとしたら、“少なくとも最後まで歩かなかった” と刻んでもらいたい」。

1982年の秋、専業作家としての生活を開始したとき路上を走り始め、以来、今にいたるまで世界各地でフル・マラソンやトライアスロン・レースを走り続けてきた。村上春樹が「走る小説家」として自分自身について真正面から綴る。


そう語る村上春樹はやはり長距離ランナーなのだ。本書の中で指摘する、小説を書くために必要な3つの資質(才能・集中力・持続力)は、作家の言葉というよりはむしろ、プロ野球選手のイチローや、プロ棋士の羽生善治が発してきた内容に近い。それだけ村上春樹は、(アーティストではなく)プロフェッショナルとして存在しているのだろう。

イチローは積み重ねを重視するからこそ、打席ごとに増減する「打率」ではなく、ひとつずつ確実に増やしていける「安打数」を年間目標に掲げる。一方、「才能とは何か」と問われた羽生善治は、「努力を継続できる力」と答えている。そして村上春樹。一打席・一戦、そして一作品ごとのヒットに振り回されずに走り続ける彼らの姿は、まさにプロフェッショナルとしての生き様なのだ。そして、「最後まで立ち止まらず」ではなく、「最後まで歩かない」という文言に、彼らの自負を見たような気がする。


走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)




2010/09/25(土) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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