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指紋と犯罪と日本警察

申請書類に必要なものとはいえ、なぜ僕があれほどFBIに指紋を取られることを嫌がったのか。それは一重に、以前、日本警察にも全く同じことをやられたという悪夢のような記憶が痛々しく蘇ってくるためだ。しかしそれも仕方ないことか、オレも若い頃はずいぶんとワルやってきたからな。

なんていうことは全くなく、その逆でワルされてしまったのである。そう、空き巣にやられてしまったんや、うちが・・・。あのショックは忘れられない。何しろ鍵を開けて家に入ろうと思ったら、中からチェーンがかかっているのである。一瞬、何が起こっているのか分からなかった。「そうか俺、チェーンかけて家出たんだっけ」なんて思ってしまうほどに、事情が飲み込めないのである。次の刹那、全てを悟り顔から血の気が引いていく。力を込めてドアを引っ張っても、ドアにかけられたチェーンは、まるで僕をあざ笑うかのように、数センチの隙間しか許さない。正面突破をあきらめ裏手に回る僕を待っていたのは、割られた窓ガラスだった。それも粉々に砕け散っているのではなく、ロックを中から解除できるのに必要十分な、手首サイズの割られ方。そうか、空き巣なんて派手にやるもんじゃないもんな、とその地味な侵入方法に妙に納得してしまったのが記憶に残っている。

部屋の中は目を覆うような荒らされ方だった。引き出しやタンスの類は全て開け放され中身が散乱していた。一人暮らしの学生の家なんか狙うなよバカヤローと、心の中で叫んだのは当然だが、たぶん空き巣の御仁も、この家なんにもねぇじゃねえかバカヤローと、心の中で叫んだのだろう。散らかってはいたものの、特別何か盗られたというものがすぐには思い当たらなかった。貴重品ではないが、個人的に必要な諸々が入っていた引き出しからも、パスポートが飛び出していたくらいで助かった。

唯一金目のものと言えたのが、500円玉貯金箱。飽きっぽい僕は1万円も貯められなかったと思うが、その貯金箱が抉じ開けられ、中身がなくなっていた。その程度の金銭的ダメージで済んだからよかったようなものの、開け口のない貯金箱を鈍器のようなもので何度も殴り続けた末にようやく抉じ開けたといった痕跡には、やはり恐怖を感じずにはいられなかった。それ以外に盗まれたり破壊されたりしたものはないなと確信し、犯人の荒らした痕には手を触れないように、そしてわずかに残っていた靴跡も踏まないようにそっと家を出て、僕は生まれて初めて110番をかけた。

あとはだいたい刑事ドラマにある通り。警察官が来るまで僕はずいぶん待たされもしたし、ようやくやって来た彼の顔には「つまんねぇ事件だな」みたいな色がありありと表れていた。こっちにとっては一生に一度の大事件なんだよコノヤロー、とまた心の中で舌打ちしながら、彼の質問に一つ一つ応えていく。ただ一つだけ、想定外のことがあった。犯人の指紋を採取するだろうとは思っていたけれど、まさか僕のまで採られるとは思わなかったのだ。えっと驚いた僕に、彼はしかし慣れた口調で「犯人のものと区別するためにも必要なんです」と、有無を言わせぬ口調できっぱりと言った。確かに言われてみればその通りなのだが、ドラマではそんなシーンを見たことがなかっただけに僕は少しうろたえてしまった。と同時に、今回は被害も小さく警察もやる気がない、それだったらそもそも110番なんてしない方がよかったのではないか、そんな思いすら頭をよぎった。それくらい、指紋を採られるというのはイヤな経験だったのだ。

警察官は最後に、「最近このあたり空き巣が多いんですよ。これからは戸締り十分注意してくださいね」と、戸締りしていてもやられた僕には全く無意味な助言をくれ、ちっぽけな事件からやっと解放されたゼといった笑顔を振りまきながら帰っていった。しかし、残念ながら話はこれでは終わらない。事件はその後思わぬ展開を見せることとなり、僕はこの男ともう一度対面、いや対峙することになるのだった。




2011/04/13(水) | Others | トラックバック(0) | コメント(4)

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Suzuka

『No title』

思わぬ展開って、なになに、その後どうなったのー?
気になります・・・。

私も日本橋に住んでいた頃やられたことがありました。金曜の夜深夜に会社から帰宅して、そのまま倒れるように寝て(その時は気付かず)、次の日の外出しようとして「あれ、時計やアクセサリーがない?」と気付くという。。。荒らすことなく、金目のものだけきれいに持っていってました。お隣さんはラップトップ等を持っていかれていました。玄関オートロックの10階だったのに!

2011/04/20(水) 16:01:25 | URL | [ 編集]

tamago

『Re: No title』

なんと、オートロックなのに、しかもお隣さんまでですか!? 悪賢い奴もいるもんですね。そのうえ寝ている間に入られるとは、何とも不安なことで。物騒な経験はもうこれきりにしたいものですね。。。

2011/04/21(木) 08:48:18 | URL | [ 編集]

-

『No title』

あ、金曜の深夜に帰ったときにはすでに賊が入った後で、部屋があらされていなかったため私は物が盗まれたと気付くことなく寝ちゃったのです(犯行は多分金曜の昼間)。狭いワンルームマンションだったので、さすがに寝てる間に誰かに部屋に入られたら気付くかと・・・。いや、私のことだから熟睡して気付かない可能性もあるけど・・・(汗)

2011/04/27(水) 19:08:57 | URL | [ 編集]

tamago

『Re: No title』

なるほど、そういうことでしたか。しかしお互い、ほんとに災難でありました・・・。

2011/04/28(木) 05:17:02 | URL | [ 編集]

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