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議論沸騰 Tiger Mom

21世紀の最初の10年なぞあっという間に過ぎ去り、新たな10年に突入した最初の1ヶ月、アメリカでは "Tiger Mom" について騒々しいほどの議論となっていた。その端緒となったのが、1月8日のWSJに掲載された "Why Chinese Mothers Are Superior"。新著出版を翌週に控えた著者 Amy Chua(イェール大学ロースクール教授)が寄稿したもので、その内容は自身の経験に照らし合わせて中国の子育ての優位性を訴えたもの。

タイガー・マム(Tiger Mom)とは、とくに中国のモーレツママのことを指し、彼女等はスパルタ教育を超えて、苛烈なまでに子供にエリート教育を施している。これが読者の心に火をつけた。アメリカの初等教育の凋落ぶりを苦々しく思っていた層は快哉を叫ぶ一方、それが母親のやることかと怒り心頭の読者も数多く、読者コメント数はWSJの歴史上最多を記録し、急遽読者コメント特集まで組むことに。

その後、本書"Battle Hymn of the Tiger Mother"の出版があり、他誌も相次いで特集を打つ。TIME (1月20日号)"Tiger Moms: Is Tough Parenting Really the Answer?"、New Yorker (1月31日号)"Amy Chua and the "Tiger Mother" Craze"といった具合。

本書も当然現在のベストセラーとなっているが、Amazon.com の書評でも星五つの最高評価と、星一つの最低評価に、読者の意見は真っ二つに割れている。話題作というのは得てしてそういうものだよね。内容の是非はともかくとして、ここまでセンセーショナルな話題作りをしたわけだから、マーケティングとしては大成功だろう。何しろ新聞記事を読んで「これはけしからん」と思った人が、わざわざ本まで買って読んでくれて、「なるほど、これはやっぱりけしからん」と言って(低評価ではあっても)感想まで書いてくれるんだから。購買に結びつくほどの『怒りパワー』というのは余程のものと思われるし、どこまで意図したものか判らないが、挑発的な物言いでここまで世論に火をつけた著者とその編集者にはツワモノとしての賞賛は送ってもよいのではないだろうか。

それにしても今回これだけの大騒ぎになった理由としては、これ以上ないと思われるほどのベストタイミングで本書が上梓されたことが第一に挙げられるだろう。アメリカにとっても中国の急成長がいよいよ現実的な恐怖となってきたという背景。そして先月発表された最新のPISAでは、アメリカの初等教育に大きな改善が見られない中、初参加の中国(上海)がぶっち切りのトップ成績を修めた。胡錦濤国家主席による今月の米国公式訪問も、中国ニュースに触れる機会が少なかったアメリカの一般家庭にまで、中国の勢いを印象付けたことだろう。

アメリカで現在子育て真最中の Mom たちにしてみれば、自分の子供たちが大人になるまでの間に、アメリカの相対的優位が益々失われるという確信とそれゆえの不安がある。そんな中で本書の著者 Amy Chua から「だからあんたたちの子育てはダメなのよ」と挑戦的なメッセージを投げつけられたわけである。痛いところをズバリと抉られて動揺しない親などいるはずもなく、そこに端を発して喧しい議論が続いているという状況だ。アメリカのそんなケンカ腰で品のない議論が健全だとは思わないが、Monster ばかりが目立つ日本の教育論議もどうかと、Tiger の跳躍を見ながら思ったりするわけである。


タイガー・マザー




2011/01/27(木) | America | トラックバック(0) | コメント(0)

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