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英語で推薦状を書いてみた

3月。今年はカンニング騒動で慌ただしかったみたいだけど、日本ではサクラサク季節。アメリカでも大学院の合格通知はだいたいこの時期に届く。アカデミックカレンダーが半年も違うのに、同じ時期にそんな通知が来るというのは、どれだけ日本のスケジュール(受験→合格→手続き→引越→入学)が忙しいかを改めて印象づけるね。さてそんな季節の中、アメリカ人学部生がやはり嬉しい通知を持ってきてくれた。グッジョブ!これは心底うれしい。僕はその推薦状を頼まれていたのだった。

話はしばらく前に遡るが、ある日唐突に推薦状を書いて欲しいと頼まれた。「えっなぜオレに?」と訝しみながら「そういうのは教授に書いてもらうべきだよ」と断ったのだが、それとは別に欲しいのだと言う。「だったら英語ネイティブスピーカーの人に」と再度お断りするも、「大丈夫だから」という少々強引な押しに負け、そういうことであればと引き受けてしまったのだった。「大丈夫かどうかは君が決めることじゃないだろ」という断り文句も喉元まで出かかったのだが、それは大人気ないだろうという躊躇と、せっかく頼んでくれたんだから頑張ってみるかという気持ちで承諾したのだが、推薦状一通書くことの難しさを後々痛いほど思い知ることになる。

だいたいそんなもの日本語でも英語でも自分で書いたことがない。もちろん書いてもらったことはあるわけだから、凡そどういう内容に仕上げればいいかというのは分かる。でもきっちり書き上げるというのはやっぱり別物だな。まずはこういう正式なレターを書くためのフォーマット(書式、フォント、サイズ、スタイル等々)を知らねば、ということで、英文ライティングで定評のある Purdue OWL なんかを参考に、Block Format と Semi-Block の違いとその理由だとか、日付を入れる正確な位置と書き方、「;」と「:」と「,」 の使い分け等々、細かいことだが一つ一つ押さえていく。

書く内容そのものには困らないのだが、その子の優秀さをアピールするような具体的エピソードをどう印象的に力強く書くか、そこに大いに悩んだ。教科書どおりの推薦状みたいなものは、まあ書けるわけよ。だけど自分で読み返しても、全然面白くないんだよこれが。深イイ話のはずなのに、それをうまいこと伝えられないもどかしさ。それはもう文章力+英語力の絶対的な欠落によるものなのだが、それでも何とかきちんと伝わるものをと思い、推敲を重ねた。

文章の面では、アピールしたいポイントがより直截的に伝わるように修正し、英語面ではその場面にぴったり当てはまる単語を探すという作業を加えていった。そのときに予想以上に役立ったのが『ドクター・ヴァンスの ビジネス・プロフェッショナルが使うパワー英単語100』と、『カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳』。恐ろしいほど安っぽいタイトルに戸惑ったが(笑)、心の底から買っておいてよかったと思えた英語本。まさかこんなところで活躍してくれるとはね。

ビジネスと銘打っているが英文ライティングであれば(スピーキングでも)分野は問わない。コンセプトはどちらも同じで、「より効果的な英単語に置き換える」ということ。その典型例がドクター・ヴァンスのプロローグで紹介されている。"It's a big problem." とは言ってしまいがちだが、これを "It's a big hurdle." と言い換えたらどうなるか?基本的な意味は変わらないのだが、それは陸上競技のハードルを選手が軽やかに飛び越えていくイメージを植え付ける。さらには、努力や粘り強さで障害を乗り越えようという前向きな姿勢として印象づけることに繋がるのだと言う。まったくもってその通りで、大きな壁の前に立ちすくんでいるかのような "problem" に対し、"hurdle" の何と鮮やかなことよ!

こういうコンセプトの単語帳なんて始めてだったのだが、極めて実践的で、めちゃくちゃ効果的。テキストの中では関連表現や collocation も充実しているので、その単語にどういう前置詞・副詞・形容詞を合わせるとよいのかもその場で分かる。だから、「置き換えた単語のインパクト+その単語周りの自然な流れ」によって、僕の書く推薦状は驚くほどパワフルかつヴィヴィッドなものへと変貌していった。自分で読み返しても今度は「おぉ」と感嘆してしまうし、あまりに力強い文章になってしまったもんだから思わず脚注に「アグレッシヴな印象を与えてすみませんが、筆者は極めてマイルドです。どうぞ誤解しないで下さい」みたいなエクスキューズを挿入したくなってしまったほど(笑)。

そうやって仕上げた推薦状を何人かの教授にも目を通してもらったのだが、"very impressive", "strong enough" みたいなお世辞コメントまでもらえて本当嬉しかったぞ。僕の推薦状で合否が決まるなんてことはないのだから、せめて他人様に読んでもらうのに恥ずかしくないレベルを、という目標は何とか達成できたように思う。毎週毎週のアスカのライティング講座にも感謝しているが、それとは別に推薦状というものを書いてみたからこそ勉強できたことも多い。とくに、短い文章の中で相手にポジティブな印象をもってもらうには、「英単語のチョイス」が極めて重要というのが一番の学びだ。

そしてこれは推薦状に限った話でもない。論文のアブストラクトやイントロダクション、調査・報告書のサマリー、そしてラヴレターにも(?)、すなわち最初の1ページで、ひいてはファーストパラグラフもしくは冒頭の一文から読者の注意を引き付け、興味を抱かせなければならないという場面で必要不可欠な視点だろう。その意味でも highly recommended なテキストなのだ。あえて難癖つけるならば、上述の hurdle のような名詞、そしていくつかの話し言葉がそれなりの数含まれていること。名詞ももちろん有り難いんだけど、動詞に比べたら、新しい英単語に置き換えた際のインパクトは数段弱まる。話し言葉にしたって、友達との会話の中で "jazz up" なんて言えたらそりゃカッコエエけどさ、論文で使う機会はまぁないよな。だからもし本書の続編や改訂版を出すとしたら、ぜひともライティングで使う動詞に絞ってまとめて欲しい。それだけ「パワフル動詞」の破壊力は半端なかったってことよ。ぜひ一度お試しあれ。


ドクター・ヴァンスの ビジネス・プロフェッショナルが使うパワー英単語100 カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳








2011/03/05(土) | English | トラックバック(0) | コメント(2)

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Suzuka

『reference』

いいですねー。その安直なタイトルの本(笑)、早速買います。私の場合途上国なので、「アマゾンで購入→PDF自炊会社に送信→PDFで納品後PCで読む」ってことになっちゃうんだけどね(^^)

私も推薦状を英文で書かなきゃいけないことがあって、でも、面白い経験でした。その子はGoogleに入社を決めて、その報告がすごく嬉しかったです。

2011/03/08(火) 15:17:50 | URL | [ 編集]

tamago

『Re: reference』

英語教材って買うのをためらうほどに安っぽいことが多いですよね、残念なことに・・。推薦状書くのは僕もホント勉強になりました。Google入社なんて厳しい競争だったのでは?うれしい報告ですね。ちなみに僕はいまだ自炊というものをやったことがなく、そのため帰国のたびにまとめ買い&成田で重量オーバー、みたいなことを懲りずに繰り返しています。アーリーアダプターからは程遠い、レイトマジョリティの僕としては、iPad4くらいになったら買ってもいいかな(笑)

2011/03/09(水) 11:17:06 | URL | [ 編集]

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