英語ライティングで役立ったテキスト・参考書を最後にまとめておく。文法上の間違いをなくすのはもちろんのこと、こういうテキストを参照し、限りなくシンプルでクリアな英文を、自分では毎回毎回書いてきたつもりだ。それでも添削をお願いすれば、いまだに真っ赤に修正されて突き返されるわけだから、どんだけ修行が必要なんだと思わざるを得ないよね(苦笑)。
それでも懲りずにこれまで毎週書き続けて思うのは、ゆっくりとだが間違いなく力はついてきたということ。あとはこの先も書き続けていくことだな。
<目次>
1.日本語おすすめテキスト
2.英文 style マストアイテム
3.より実践的な style の獲得
4.音読という視点で捉える style
5.アカデミック・ライティング<基礎>
6.アカデミック・ライティング<応用>
7.アカデミック・プレゼンテーション決定版
8.書き続けるマインド
9.書くために必要な英単語
それでも懲りずにこれまで毎週書き続けて思うのは、ゆっくりとだが間違いなく力はついてきたということ。あとはこの先も書き続けていくことだな。
<目次>
1.日本語おすすめテキスト
2.英文 style マストアイテム
3.より実践的な style の獲得
4.音読という視点で捉える style
5.アカデミック・ライティング<基礎>
6.アカデミック・ライティング<応用>
7.アカデミック・プレゼンテーション決定版
8.書き続けるマインド
9.書くために必要な英単語
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1.日本語おすすめテキスト
本屋で少し眺めれば分かるように、英文ライティングに関する日本語テキストというものは、あまりいいものがない。TOEFL向け作文対策みたいなのはあっても、その先に進むためのもの、より上のレベルを学ぶためのものがない。少なくとも僕が留学する前に、そういうテキストはほとんど見当たらなかった。そんな中で当時見つけたのが『情報発信型スーパーレベルライティング』。ひとことで言うと、初見でびびった、そのレベルの高さに。スーパーレベルは伊達じゃない。ついでにいうと、その著者・植田一三のファッションセンスも半端ない(笑)。僕はそういう二重の衝撃を受け、この本を手にしたのだった。しかし繰り返し言うが、この本のレベルは高い。日本語テキストとしては真っ先におすすめしたいものだ。
もう一つの『日本人なら必ず誤訳する英文』は、参考書ではない。その上、英訳を取り上げたものだから、ライティングに関するものでもない。それでも、自分がカッチリ読めない英文法をキッチリ書けるわけがないのだ、というのは以前書いた通り。耳が痛いほど自分の誤解・誤読を指摘されることにはなるが、英文を書く際の手持ちのバラエティを増やすという点で、読んで極めて勉強になる一冊。早いうちに「英語自慢の鼻をへし折」られておくのがよし。その続編『日本人なら必ず悪訳する英文』も、その挑発的なタイトル同様に大変ためになる内容だ。



上記以外に良書が見当たらなかった英文ライティングの和書だが、最近登場した『こなれた英文を書く技術』および『アピールする英文を書く技術』はこの分野の和書決定版と言えるようなつくりとなっている(詳細)。タイトルが示唆する通り、「ワンランク上の文章」を書きたいと考えている人がターゲットであり、その意味でも、植田一三の「スーパーレベルライティング」からさらに次のステップとして読むのがふさわしいだろう。


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2.英文 style マストアイテム
この2冊は基本中の基本だからこそ、まずはここから始める。グレッグ・マンキューがブッシュ政権時代、Council of Economic Advisers (CEA) チェアを務めていた際、経済レポートの書き方としてスタッフに送ったアドバイスがこちら。この中で書かれているように、"Buy a copy of Strunk and White’s Elements of Style. Also, William Zinsser’s On Writing Well. Read them―again and again and again." アメリカ人の専門家たちでさえ、簡にして要を得たレポートを書くために、この二冊を読まされているのだ。だったら、日本人の僕らはもっと繰り返して読むほかないよな、と思うわけである。


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3.より実践的な style の獲得
その次に読んでよかったのが、"Writing with Style"。"The Elements of Style" の影に隠れて割りを食っているものの、内容面ではこちらの方が優れていると評価する人は多く、僕自身もその意見に賛同する。"The Elements of Style" がダラダラとした記述が多い反面、"Writing with Style" では同じようなトピックを扱いつつも書き方がクリアでピンポイント。良い英文と悪い英文を並べて解説しているのも実践的だし、小説家や歴代大統領の言葉を多く引いているのも魅力的。"The Elements of Style" を読んだもののイマイチだるいなぁと感じたり、別の視点から書かれたテキストを探しているなら絶対におすすめできる一冊。
もう一つは、"Style: Lessons in Clarity and Grace"。上記三冊の style 本が全て「ルールを解説」したものだとすれば、本書は「エクササイズを徹底」するものと言える。頭で理解した(つもりの)ルールを実践することができるかどうかを、各章の練習問題を通じて確認していく。手を動かして体で覚える、そういう極めてプラクティカルなテキストなのである。


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4.音読という視点で捉える style
本書 "Understanding Style" は、よい文章というものを sound & voice という観点から捉え直すという優れてユニークなアプローチを取っている。文章を読む際に、どの名詞・動詞・接続詞を強調して読んでいるか、そしてどこで息継ぎをして読んでいるかという「読み手側の論理」からの解説は、とくに英語ノンネイティブにとって役立つものだ。上記の style 本に象徴されるように、「書き手側のルール」は最低限守らねばならないことである。しかし、それだけでは読みやすい文章とはならない。ネイティブが音読しても読みやすい・分かりやすいと思える文章とするための視点がよくまとまっており、highly recommended な一冊。著者のウェブサイトでも、練習問題の一部公開や、関連リンク等がまとめられている。英文における sound & voice の重要については、こちらもご参照を。

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5.アカデミック・ライティング<基礎>
以上紹介してきたテキストは、一般的な「よい文章」とは何か、そしてそれをどう書くか、という原理原則を解説したものである。それを踏まえた上で必要になるのが、アカデミック・ライティング。学術論文はもちろんのこと、政府や企業の各種レポートまで、正しい構成で組み立てられた説得力のある論理的な文章を書くためには、必要不可欠のライティング・スキルである。
そんなアカデミック・ライティングの良質なテキストの一つが、"They Say, I Say"。表紙のカジュアルさに反し、その内容は極めてしっかりしたものだ。本書のポイントは、"summarize what others have said (“they say”) to set up one’s own argument (“I say”)" の一文に尽きる。すなわち、論文のイントロダクション等の書き方にとても効果的。こちらのエントリで詳述したように、自分自身の研究が literature の中にどう位置づけられ、そして類似研究とどう差別化されているのか、その書き方が具体的なテンプレートを用いて解説されていく。専門を問わずに使えるアカデミックライティングの良書である。
もう一つは、"Clean, Well-Lighted Sentences"。こちらは英語ネイティブでも間違えやすい英文法に焦点を当てた実践的なテキスト。同じく別エントリで書いたように、文法の使い分けを効果的に教えてくれる優れた一冊である。


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6.アカデミック・ライティング<応用>
次の3冊はアカデミック・ライティングの決定版と言えるだろう。実際の論文を題材に、Abstract, Introduction, Method, Conclusion 等のセクションごとに分けて解説している。各セクションの目的とその達成方法について、効果的なフレーズの使い方、そして良い例と悪い例の比較分析等々、とても実践的なアドバイスが続き、現在論文執筆中という人にとっては常に手元で参照したい内容だ。(詳細はこちらのエントリ)
3冊すべてに良さがあるので僕自身は全て持っているのだが、あえて一冊を選ぶとするならば、"Academic Writing for Graduate Students: Essential Tasks and Skills" は大学院生全般向け、"Science Research Writing: A Guide for Non-Native Speakers of English" は特にサイエンス専攻に、"English for Writing Research Papers" は社会科学専攻向けと言えるだろう。
ちなみに、"Academic Writing for Graduate Students" は英語ネイティブを対象に、他の2冊はどちらも英語ノンネイティブ向けに書かれている。ただしノンネイティブ向けの方が易しいということは全くなく、実際にはその逆である。つまり、"Academic Writing for Graduate Students" でアカデミック・ライティング全般のアドバイスを受け、そこで書かれていないノンネイティブ向けの細かい注意点を他の2冊で補う、という使い方がよいと思う。



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7.アカデミック・プレゼンテーション決定版
"English for Writing Research Papers" の著者 Adrian Wallwork はノンネイティブ向けの英語テキストをシリーズで出しているのだが、ライティングの続編となる "English for Presentations at International Conferences" および "English for Academic Correspondence and Socializing" も、よくぞ英語ノンネイティブの気持ちをここまで分かってくれたと、本当に目からウロコの決定版なのである。(詳細はこちらのエントリ)
学会のプレゼンテーションで英語ノンネイティブだからこそやってしまうミスを一つ一つ指摘し、どう修正すべきかが細かくアドバイスされていく。そもそも一番緊張するプレゼン開始時に使えるフレーズの紹介や、スライドからスライドへ移るときに効果的な接続詞・言い回し等々、絶対に知っておきたい助言が続く。
またシリーズ三冊目の "Academic Correspondence and Socializing" では、論文投稿やエディターとのメールのやり取りから、学会での社交・ネットワーキングまで、英語ノンネイティブはまさにそういう点にも悩みを抱えているんだよというトピックに焦点が当てられ、大変にプラクティカルな内容。学会の立食パーティなんかではしょっちゅう独りぼっちになってしまう、なんていう僕やあなたには(笑)、読んでおくだけで気持ちが楽になるハズ。ちなみに本シリーズはその後も新作が発表され続け、現在シリーズ合計6冊が出版されている。新作もぜひ要チェック。


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8.書き続けるマインド
文章の書き方そのものではないが、文章がうまくなる秘訣を開陳している二冊をご紹介。それはすなわち「書き続ける」ということ、以上。というわけで何のテクニックも教えてくれない(笑)。しかし、ライティングに王道なしと改めて認識し、プロの人達でも苦労している様子や、self motivate する様が伺えて興味深い。
"Writing Your Dissertation in Fifteen Minutes a Day" はロングセラーの一冊で、年配教授がゆっくりと諭すような調子で語りかける。もう一冊の "How to Write a Lot" は近年出版されたもので、若手教授が後輩にフランクに話しかけるような文調。エクセルで進捗管理をするあたりが現代的といえるかも。いずれにしろ、スケジュールを立てて書く時間を確保し、書くという行為を日常のものとし、そして毎日書き続けるということ。質の高い文章を一定量書けるようになるためには、どうやらそれしか方法はないようだ。


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9.書くために必要な英単語
最後に英単語について。ロジカルでクリアな英文が書けるに越したことはない。だが、書くためには当然英単語を十分に知っておかねばならないし、そして書くときには知っている英単語を使い分けなくてはならない。アカデミック・ライティングにおいても word choice と呼ばれるように、文章の内容や状況に応じてベストな英単語を選択することは、ライティング・スキルの一つなのである。
ただ、英単語を覚えるのは大変つまらなく苦痛ですらある(苦笑)。なので、最短時間で最大効果を出すのに役立つ英単語テキストを以下リストアップしておきたい。単語を覚えること自体を目的化せず、その先に目指すクリアな文章や美しい英文を思い描きながら、ぜひとも集中してインプットしたいものである。
まず最初におすすめしたいのが、Google日本法人の元社長・村上憲郎の『村上式シンプル英語勉強法』。曰く、英単語のインプットは流し込むように、一日1万語を眺めて覚えろ、ということ。そういう体育会チックなやり方は個人的には好みではないし、正直なところ、もっとインテリジェントにかつスタイリッシュにやりたいものである。ただ、僕自身が英語論文を書き、英語で授業するという経験を通じて痛いほど感じた単語不足という根本的な問題。英語に限らずどの語学でもそうなのだろうが、結局は身につけた単語の多さがモノを言うのではないかと思う。その意味で、村上氏の提言は無視できないし、実のところ学生にとっても社会人にとっても、このように英単語を目から流しこみ、頭に叩き込むというのは、だらだらやるよりも遥かに効果が高い方法なのではないかと思う(詳細)。

その村上氏が絶賛している英単語テキストが『発信型英語スーパーボキャブラリービルディング』。偶然にもこれは、一番上で紹介した『発信型英語スーパーレベルライティング』の植田一三の著書でもある。これが取り上げられていたということで、僕は個人的に村上氏の方法論と彼がチョイスするテキストを使おうという気になったのである。
ただし、ライティング同様に、植田一三のテキストはレベルが高い。もし『発信型英語スーパーボキャブラリービルディング』で取り上げられている単語レベルが高過ぎるようであれば、村上氏の第二および第三のおすすめである、『ニュース英語パワーボキャビル4000語』もしくは『英単語ピーナツほどおいしいものはない』あたりから始めるとよいだろう。



もう一つのおすすめが、『Duo 3.0』。大学受験の英単語帳としても人気だが、もちろん留学準備や社会人にも使える一冊。その最大の理由が、本書の特徴でもある、「560本の英文で、現代英語の重要単語1600語と重要熟語1000語を頭に植えつける」というものだ。「暗記する価値のある英文」という売り文句の通り、極めて価値ある単語帳なのである。そしてその価値をさらに高めているのが、『DUO 3.0 復習用CD』。これはもう最初から単語帳+CDのセットで売り出すべき内容だったと思う。上記560本の英文が、ナチュラル・スピードで読まれる。合計60分を繰り返し聴くというのは、通学・通勤時にはもってこいの学習法ではないだろうか。


基礎英単語を叩き込んだ後のポイントは、状況に応じて使い分けるということだろう。例え同じことを言っている文章だとしても、選ぶ単語次第でびっくりするほどリズムがよくなり、見違えるほど主張がパワフルになるというのは、別のところで書いた通りだ。そんな word choice のパワーとテクニックについて解説している以下の3冊はどれもおすすめできる。ぜひ自分の書いた英文に当てはめてその効果を見てみるといいだろう、間違いなくその変化に感嘆するはずだ。



上の3冊で解説されるような、力強くメッセージを運ぶパワー単語は、その文章のキーワード・キーフレーズに絡めて使いたい。ボクシングに例えるなら、相手をノックアウトする右ストレートパンチと言えるだろう。しかし、その必殺パンチを決めるためには、効果的な左ジャブが欠かせないわけであり、どこを強調したいかということはすなわち、どこは強調しなくてよいか、という意思決定と表裏一体なのである。
そのためには、英単語が持つ微妙なニュアンスの違いを抑えておかねばならないのだが、そんなときに役立ったのがこの『ビジネス英語類語使い分け辞典』。読者のニーズに応える一冊だったのだろう、その続編も登場してた。さらに上の英文ライティングを目指し、細かい単語の使い分けまでできるようになりたいものである(詳細)。


2011/04/01(金) | English | トラックバック(0) | コメント(3)