今、ようやくなんだが "This time is different" by Reinhart & Rogoff を読んでいる。計66ヶ国、800年の歴史に学ぶ金融危機の教訓。前に書いたが、ニーアル・ファーガソンの『マネーの進化史』のように、歴史家が紡ぐ物語も「ストーリー」としてそれなりの面白さがあるのだが、きっちりとしたデータに基づく分析は当然だがそれを遥かに上回る迫力と説得力を持つ。
そんな本書もちょうど訳書『国家は破綻する』が出版されたところだ。以前に比べれば翻訳までのタイムラグもずいぶん短くなったように思う。しかし本書に限らず、一般論として、原書で読む価値は今もまだまだ大きいと思う。
第一に、それでも出版のタイミング差は大きい。本書は2009年9月に出版されたものであり、僕が積ん読してなければ、訳書が出るずっと前に読み終えていたはずだ(苦笑)。そして、とくに旬のテーマであればあるほど「その時」に読むことが重要になる。これこそがとりわけ経済書を原書で読む最大の価値だと思うし、それは今も変わらず、いやむしろ世界経済が変化するスピードがますます早い現在だからこそ、その価値は高まっていると言えよう。
第二に、まだまだ訳書の値段が高いね。翻訳という厄介な仕事をしてくれたことへの感謝とリスペクトを忘れるわけにはいかない。がしかし、本書で比較して1.7倍の価格差というのは、訳書購入をためらうのに十分な差額と思われる。最近は円安方向へ揺り戻してるとはいえ、歴史的にみて円高のこの時期は、やっぱり原書購入のアドバンテージが大きいと思う。
第三に、当たり前だが英語を勉強するいいトレーニングにもなるわけだ。僕は、実は同じ本を Audible のオーディオブックでも購入し、「聴きながら読む」ということにしている。なんたる無駄!って思ったでしょ?いや、自分でもそう思ってるから(笑)。でもこれが英語リスニングの最も効果的なトレーニングだと僕は信じている。書籍とオーディオブックで2倍のコストがかかっても、2倍以上のリターンがあると考えており、だからこそ今もそれを実践し続けているのだ。
内容を深く理解できる。知らない単語を後からチェックできる。自分の発音・アクセントが間違っていたと分かる。オーディオで聞くことのメリットは様々にあるが、僕が一番重要視しているのは「スピーキングの強調ポイント・間の取り方」である。そう、僕はリスニングのため(だけ)にオーディを聞いているのではない。そうではなく「自分がスピーキングする」際に備えて聴いているのである。
よく言われるように、平坦な日本語に比べ、英語は抑揚が大きい。一つの文の中でもどこにイントネーションを置くか。パラグラフを変える際の順接・逆説の強調。そしてあえて黙る数秒間を作りだすことでも聞き手の注意を引きつけることができる。こうしたこと一つ一つは、当然自分のプレゼンテーションにも活きてくるものだ。細かいことかも知れないが、それができるかどうかで「聞き手の理解度」は大きく変わってくるだろう。そうできるようになるために僕はオーディを聴き続けているのである。
オーディオブックでは、こうしたことを「ナレーションのプロ」に学ぶことができる。発音はクリアだし、話すスピードも適度にゆっくりだ。まさに自分が参考にすべき話し方そのものなのである。その価値を考えたら、書籍とオーディオで二重にコストがかかるくらい全くもって些細な問題でしかない。それに今どき、オーディオブックも十分過ぎるほどに安い。本書を例にとれば、原書+オーディオブックの方が、訳書一冊買うよりも安いのである。だったら僕は「聴きながら読む」方を選びたい。そして本書オーディオブックは合計9時間。映画4,5本分にも及ぶ長さだ。デートで使える英会話を盗む以外は、映画よりもオーディオブックの方が間違いなく効果的なのだ。

本書の次に読もう(聴こう)と思っているのが、"Fault lines"。すまんなこいつも今まで積ん読で(苦笑)。シカゴ大学の Rajan が金融危機を予測していたとして話題になり、Financial Times の昨年のベスト・ビジネス書を受賞したもの。オーディオブックは合計13時間とさらに長い。これも先日、訳書『フォールト・ラインズ』として出版されてしまったのだが、その翻訳があまりにもヒドイと噂になっている。実際に amazon の書評も近年まれに見るほどに翻訳批判・出版社非難が相次いでいる。こういうことがあり得るから、訳書出版まで待つよりも、さっさと旬のタイミングで原書にあたるのが一番いいと思うわけだ。まあ僕みたいに積ん読して旬を逃しまくりの人が言っても、全然説得力ないんだけどな(笑)。

最後に、僕自身の痛い経験に基づき、オーディオブックで「聴いてはいけない」ジャンルをメモしておこう。ワーストジャンルは伝記・回想録の類。アメリカにああいうの多いんだよねえ。で僕も買ってしまったわけだよ、ウォーレン・バフェット伝『スノーボール』を。この時はまだ「聴きながら読む」を始めたばかりの頃で、オーディオブックで長時間かかるものを選んだわけである。だから合計37時間もかかる本書を「最高のコストパフィーマンス」と考えてチョイスしたのだが、そのセコさが完全に裏目に出た。バフェット爺さんのどーでもいい話とか、つまんねー思い出に、まるまる1.5日分付き合うってどんだけ苦痛か想像できる?眠いのなんのって、バフェットに罪はないのだが、もう勘弁して欲しいと心の底から願うより他なかった。すまぬ。
もう一つのワーストジャンルは、インサイドストーリーもの。最近で言えば、『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』ね。オーディオブック合計22時間。しかし途中からはもう耐えられないほど冗長で退屈な舞台裏の話が続くだけだった。まさに絶対に買ってはいけないジャンルなのである。お気をつけあそばせ。
そういう意味でも、"This time is different" や "Fault lines" のような硬派な経済本はオーディオで聴く価値が極めて高いのである。
第一に、それでも出版のタイミング差は大きい。本書は2009年9月に出版されたものであり、僕が積ん読してなければ、訳書が出るずっと前に読み終えていたはずだ(苦笑)。そして、とくに旬のテーマであればあるほど「その時」に読むことが重要になる。これこそがとりわけ経済書を原書で読む最大の価値だと思うし、それは今も変わらず、いやむしろ世界経済が変化するスピードがますます早い現在だからこそ、その価値は高まっていると言えよう。
第二に、まだまだ訳書の値段が高いね。翻訳という厄介な仕事をしてくれたことへの感謝とリスペクトを忘れるわけにはいかない。がしかし、本書で比較して1.7倍の価格差というのは、訳書購入をためらうのに十分な差額と思われる。最近は円安方向へ揺り戻してるとはいえ、歴史的にみて円高のこの時期は、やっぱり原書購入のアドバンテージが大きいと思う。
第三に、当たり前だが英語を勉強するいいトレーニングにもなるわけだ。僕は、実は同じ本を Audible のオーディオブックでも購入し、「聴きながら読む」ということにしている。なんたる無駄!って思ったでしょ?いや、自分でもそう思ってるから(笑)。でもこれが英語リスニングの最も効果的なトレーニングだと僕は信じている。書籍とオーディオブックで2倍のコストがかかっても、2倍以上のリターンがあると考えており、だからこそ今もそれを実践し続けているのだ。
内容を深く理解できる。知らない単語を後からチェックできる。自分の発音・アクセントが間違っていたと分かる。オーディオで聞くことのメリットは様々にあるが、僕が一番重要視しているのは「スピーキングの強調ポイント・間の取り方」である。そう、僕はリスニングのため(だけ)にオーディを聞いているのではない。そうではなく「自分がスピーキングする」際に備えて聴いているのである。
よく言われるように、平坦な日本語に比べ、英語は抑揚が大きい。一つの文の中でもどこにイントネーションを置くか。パラグラフを変える際の順接・逆説の強調。そしてあえて黙る数秒間を作りだすことでも聞き手の注意を引きつけることができる。こうしたこと一つ一つは、当然自分のプレゼンテーションにも活きてくるものだ。細かいことかも知れないが、それができるかどうかで「聞き手の理解度」は大きく変わってくるだろう。そうできるようになるために僕はオーディを聴き続けているのである。
オーディオブックでは、こうしたことを「ナレーションのプロ」に学ぶことができる。発音はクリアだし、話すスピードも適度にゆっくりだ。まさに自分が参考にすべき話し方そのものなのである。その価値を考えたら、書籍とオーディオで二重にコストがかかるくらい全くもって些細な問題でしかない。それに今どき、オーディオブックも十分過ぎるほどに安い。本書を例にとれば、原書+オーディオブックの方が、訳書一冊買うよりも安いのである。だったら僕は「聴きながら読む」方を選びたい。そして本書オーディオブックは合計9時間。映画4,5本分にも及ぶ長さだ。デートで使える英会話を盗む以外は、映画よりもオーディオブックの方が間違いなく効果的なのだ。


本書の次に読もう(聴こう)と思っているのが、"Fault lines"。すまんなこいつも今まで積ん読で(苦笑)。シカゴ大学の Rajan が金融危機を予測していたとして話題になり、Financial Times の昨年のベスト・ビジネス書を受賞したもの。オーディオブックは合計13時間とさらに長い。これも先日、訳書『フォールト・ラインズ』として出版されてしまったのだが、その翻訳があまりにもヒドイと噂になっている。実際に amazon の書評も近年まれに見るほどに翻訳批判・出版社非難が相次いでいる。こういうことがあり得るから、訳書出版まで待つよりも、さっさと旬のタイミングで原書にあたるのが一番いいと思うわけだ。まあ僕みたいに積ん読して旬を逃しまくりの人が言っても、全然説得力ないんだけどな(笑)。


最後に、僕自身の痛い経験に基づき、オーディオブックで「聴いてはいけない」ジャンルをメモしておこう。ワーストジャンルは伝記・回想録の類。アメリカにああいうの多いんだよねえ。で僕も買ってしまったわけだよ、ウォーレン・バフェット伝『スノーボール』を。この時はまだ「聴きながら読む」を始めたばかりの頃で、オーディオブックで長時間かかるものを選んだわけである。だから合計37時間もかかる本書を「最高のコストパフィーマンス」と考えてチョイスしたのだが、そのセコさが完全に裏目に出た。バフェット爺さんのどーでもいい話とか、つまんねー思い出に、まるまる1.5日分付き合うってどんだけ苦痛か想像できる?眠いのなんのって、バフェットに罪はないのだが、もう勘弁して欲しいと心の底から願うより他なかった。すまぬ。
もう一つのワーストジャンルは、インサイドストーリーもの。最近で言えば、『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』ね。オーディオブック合計22時間。しかし途中からはもう耐えられないほど冗長で退屈な舞台裏の話が続くだけだった。まさに絶対に買ってはいけないジャンルなのである。お気をつけあそばせ。
そういう意味でも、"This time is different" や "Fault lines" のような硬派な経済本はオーディオで聴く価値が極めて高いのである。
2011/04/04(月) | English | トラックバック(0) | コメント(0)