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「アスカ、心のむこうに」

ついにこの日がやってきてしまった。アスカの卒業。2年半に渡って僕に英語を教えてくれた彼女も、いよいよ今月で卒業を迎える。卒業式に合わせて実家からやってきたご両親から、ありがたいことに夕食にお招き頂く。そうか、あの強面のお父上にまた会うのか、と思うと、その緊張から僕の頭の中にはもうこのBGMしか流れなくなる。





柔らかい物腰の中にも感じられる、鋭い眼差し。握手するたびに握りつぶされるかと思うほど大きな手のひら。ユダヤ系アメリカ人であるアスカ一家のこの大黒柱は、対面する者を威圧するようなオーラをもっている。イスラエルという国の頭脳・優秀さはよく知られるところだが、それと同時に、この国は女性に対しても兵役を義務づける戦闘国家でもある。この知的な父親のそのガタイのよさと視線のせいで、そんなことにまで思いを巡らせる。

もちろん常日頃から好戦的であるわけでは全くないのだが、アスカの父親からは、何か事が起これば一戦でも二戦でも交えようぞ、という凄みを感じるのである。彼はそうやって、アメリカという国の中で、家族と自分を、今日も明日も守り続けていくのであろう。

洒落たレストランで談笑しつつ、あらためてアスカとの思い出を振り返る。初めて会ったとき彼女はまだ19歳だった。期待を遥かに越える明晰さと厳しさとで、とくに僕の英文を真っ赤に添削してくれた。僕の英文ライティングで向上したものは、全て彼女のおかげと言ってよい。日本への短期留学へと送り出したこと。トップ・ロースクールからの合格通知。そして gap year を利用してもう一年日本へ行くと決めたこと。そんな数々の思い出で一杯になる。

食事を終え、車で送ってもらい、最後の挨拶。彼女はその類まれな知性と才能、そしてその向上心と野心でもって今後さらに活躍の場を広げていくだろう。そんな彼女と出会えたこと、そしてこれまでの感謝の言葉を述べ、ささやかながら餞の言葉を贈る。でも彼女自身は、「・・・ごめんなさい。こういうとき、どういう顔すればいいのか、わからないの」とうつむき気味だ。だから僕はそっと微笑んで言う。「笑えば、いいと思うよ」ってね。ありがとうアスカ、そして、今日の日はさようなら、また会う日まで。




2011/05/19(木) | English | トラックバック(0) | コメント(0)

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