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英語パブリックスピーキングの方法論

アメリカの大きな書店であれば、どこへ行っても Public Speaking のコーナーが充実しているのが分かるだろう。大統領のスピーチに世界が耳を傾け、そのスピーチライターに注目が集まり、そして大企業CEOに対してアドバイスする数多くのスピーチコンサルタント達の名前を見かけるように、この国では、演説やプレゼン等を含めた public speaking というものがとても重要視されている。

ヒューレット・パッカード社創業者のヒューレット氏が次のように述べたように、public speaking とは国民・顧客・株主等からの「信頼」を得るために、何よりも大切な時間なのである。それこそ、その30分で全てが決すると言ってもよいほど優先順位が高いものなのだ。この危機感こそが、まずもって欠かせない認識だと思う。

"How can I trust someone to manage multi-million dollar projects if he or she can't manage a half-hour speech?"



Wikipedia では以下のように説明されるように、聴衆の前で話をすることであれば何でも public speaking のカテゴリーに入ってしまうが、ここでのポイントは influence だろう。大統領であれば、これからの政策に賛同してもらわねばならないし、CEOであれば株主や顧客に対する説明責任と同時に今後の支持も取り付ける必要がある。TEDなら自分のビジョンや自社の技術に共感してもらうことが目的となるかも知れない。いずれにしても最終的には、ロジックとパーソナリティを合わせて「こいつがそこまで言うのなら」という信頼を獲得せねばならないのだ。public speaking とは、その勝負の舞台なのである。

Public speaking is the process of speaking to a group of people in a structured, deliberate manner intended to inform, influence, or entertain the listeners. It is closely allied to "presenting", although the latter has more of a commercial connotation.



それくらい大きな意味で public speaking を捉えるのであれば、当然、大学の講義というものもその範疇に入ってくる。学生をそれこそ inform し、entertain し、そして influence しようと思うのであれば、やはりそれだけの structure と manner が不可欠となる所以である。授業後に、なかなか面白れーじゃんという印象を与えられるか、くっだらねーで終わるか、それこそ一場面毎が勝負なのだと言えよう。


英語のいいところは、ライティングと同様に、そういうシステマチックな練習となるテキストが揃っていることである。僕がいま教えている統計学の授業でも、その面白さと楽しさを余すところなく伝えられるようにと以下の2冊をざっと読んでいるのだが、参考になる点が多々ある。"Public Speaking for Psychologists" は心理学の教授が書いたものであり、以前英文ライティングについて書いた際にオススメした "How to Write a Lot" と同じ著者である。"Confessions of a Public Speaker" はジャーナリストの手によるもの。全く異なる経歴の著者によるものだけに、二冊それぞれに個性があるが、読み比べてみて共通して感じるのは最初からスピーチが上手い奴なんていないということ。


Public Speaking for Psychologists: A Lighthearted Guide to Research Presentations, Job Talks, and Other Opportunities to Embarrass Yourself Confessions of a Public Speaker


聴衆の前で話すことに緊張を覚えるのは誰しも同じことだ。アメリカ人がプレゼンが上手いなんていう、よく聞く一般論もどうかと思う。確実に言えるのは、上手い奴は圧倒的に練習しているということ。アメリカ人でも練習していない奴は全然迫力ないし、こいつスゲエと思える者は皆どこかでそういう練習をしているよね。とくに高校で猛特訓をしてきたと聞くことが多い。

そう考えると、不安を抑え、恐怖心を克服し、平静を装い、大舞台において自信に満ちた語り口で話せるのは、それだけの練習量をこなしてきたからなのだということがよく分かる。オバマが凄い?スティーブ・ジョブズが半端ねえ?当たり前である。それだけの準備を毎回しているのだから。だから僕らは自分自身でこう問わねばならない。「俺はオバマ以上に、ジョブズ以上に練習してきたのか?」と。間違いなく彼らより時間はあるわけだが、その時間をスピーチ・プレゼンの練習に投入してきただろうか。ここが勝負の分かれ目だという危機感を持ち、果たして彼ら以上に死にものぐるいで取り組んできたのかと。

自分の研究発表だろうと、job talk だろうと、指導教授とのミーティングだろうと、講義だろうと、そういう「ここでミスったらお終いだ」という危機感だけは忘れずに持ち続けねばならないと思う。数多くの public speaking の書籍を見るたびに、そういう致命的なミスをしてきた人がいかに多いかと思わざるを得ない。そして、こういう書物から学ぶのは、そうしたミスを未然に防ぐための技術論ももちろん含まれるのだが、それより何よりも、この先はもう後がないという崖っぷち感なのではないかと、僕は個人的に考えているのである。だから、僕はこの夏の統計学の講義を、それこそ背水の陣といった気持ちで今取り組んでいるのである。







2011/07/03(日) | English | トラックバック(0) | コメント(0)

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