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アメリカの現代政治

アメリカの政治を理解するのが難しい。大統領制に二大政党制と、一見すると極めてシンプルなように見える、だから余計に難しい。

例えばこの二大政党、右か左か、保守かリベラルか、と単純に色分けできたらどんなに楽だろう。しかし、現実ははるかに複雑だ。例えば、古くからの共和党支持者がいたとしよう。彼(彼女)が、ブッシュ現政権が始めたイラク戦争に極めて批判的な意見を持っているとき、彼らはオバマを支持しただろうか、それともマケインを支持しただろうか。

外交政策を重視して次期大統領を選ぶのであれば、民主党を支持したかも知れない。実際にこうした人々が多かったからこそ、オバマの圧勝に終わったのだろう。一方で、中絶や同性愛結婚を認める民主党の姿勢に否定的であれば、引き続き共和党支持・マケイン支持をしたかも知れない。だからこそ、ペイリン副大統領候補が指名された際に共和党員はあれだけ熱狂したわけだ。

すなわち、アメリカの選挙では、50州が青色(民主党)と赤色(共和党)に分断されているとよく指摘されるが、それ以上に個人個人の中でも青い部分と赤い部分とが混在しているのだと感じた。もちろん、都市部の真っ青な層、郊外の真っ赤な層、というのも確かに存在するだろう。しかし、そのように居住地や職業で色分けするのではなく、なぜ個人の中で青い部分と赤い部分があるのか、それは具体的にどの部分なのかを理解することが、より深くアメリカ政治を理解することにつながるのだろうと感じた。

そして、個人のその部分とは、それぞれの信条であり信念であり、そして多くの場合、宗教であったりするわけだ。日本人の僕にとって、大統領選挙において、しかも戦争を含めた外交戦略の見直しと、金融危機に対する迅速な対応が求められている状況下において、なぜ中絶や同性愛が議論の対象となるのかが最後まで分からなかった。

しかし、かなりの数の層にとっては、「それこそ」が最大の問題なのだ。つまり、経済的にリベラルか保守かという判断基軸の他に、社会的にリベラルか保守か、軍事的にはどうか、といった多元的な軸が存在する。そうなると簡単に民主党か共和党か、もしくはオバマかマケインか、とは決断できない複雑な問題構造になるのだ。そんな人々が最後のよりどころとするのが、先に述べた信条・信念だ。「建国の精神」に立ち返って、当時のピューリタン達と同じ思想で物事を決断する。この精神こそが彼らの最も重要な価値観であるのならば、経済政策や外交戦略は、そのもっと後に位置づけられるということになる。

日本の政治観からはなかなか理解しづらく、今も腑に落ちるとまでは言えない。しかし、リベラルか保守かという議論の奥行きを感じ、わずかではあるものの、アメリカの現代社会・現代政治をより立体的に見つめられるようになったと思う。

以下3冊はその意味で非常に参考になった。新書でお手軽であり、かついずれも2008年発刊と情報が新しい点がとてもよい。『アメリカ人の政治』は、アメリカの精神・価値観・正義感に詳しい。とくに、自分たちの思想をどのように政治に反映させていくのかといった文脈で、シンクタンクやロビイストを解説する視点は面白く読める。建国からのアメリカ政治史を短くまとめている点も参考になる。

『見えないアメリカ -保守とリベラルのあいだ-』は、著者の経験(ヒラリー・クリントン選挙本部勤務)が存分に活かされている。人種や信仰等のデモグラフィック情報をどう収拾するか、その情報でどう投票者を色づけしていくのか、そしてどうメディアを活用してプロモーションしていくのか、といった描写がリアルだ。

『民主党のアメリカ、共和党のアメリカ』は、両党の精神およびカルチャー、そしてそれに基づいた政策比較がよい。とくにカルチャー面では、一本の映画であっても、民主党色が強い、共和党色が強いという傾向があるというのは、若干紋切型ではあるものの、新しく知る分析視点であり、刺激に富んでいた。


アメリカ人の政治 (PHP新書) 見えないアメリカ (講談社現代新書) 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ (日経プレミアシリーズ)




2009/01/08(木) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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