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なぜ日本の国宝級名品がアメリカの美術館にあるのか?

もう一つ個人的に興味深い日本の「なぜ?」がこれである。それは、終戦後の占領体制の下、アメリカ軍が日本全国から収奪し、手土産がわりに持ち帰ったから、ということではない。ロックフェラーを始めとするアメリカの大富豪たちに積極的に日本美術を販売していった「日本の企業」があったのだ、というのが『ハウス・オブ・ヤマナカ』の指摘である。

今年3月に出版された本書を僕はまだ読んでいない。でもその著者が朽木ゆり子であり、そして上記の興味深いクエスチョンから、僕にとっての「次回帰国時に真っ先に読みたい書籍」リストの一番上に位置する本である。なにしろ福岡伸一のフェルメール紀行に魅せられて旅に出た僕のもう一つのガイドブックが、朽木ゆり子の『フェルメール全点踏破の旅』であり『謎解き フェルメール』であったのだから。僕は彼女のクリアな分析と文体が好きなのである。

そして本書もまた海外の関心を持たれるのではないかと思うのだ。とくに、アメリカで日本および東洋美術を専門としている人たちなどからは。書名を「ハウス・オブ・ヤマナカ」としたのも、英訳までを見据えた狙いがあるからなのではないだろうか。

著者は日本の大きな「なぜ?」を掘り下げ、歴史の彼方に埋没した一企業に再び光を当てる。資料に乏しいテーマに取り組んだことからもその労力を窺い知ることはできる。そして、それだけのエネルギーを注いだという自負こそが書名「ハウス・オブ・ヤマナカ」の背景にある意識だろう。それはすなわち、欧州・米国の財閥の興亡を扱った大作として知られる "The House of Morgan" (訳書『モルガン家』)や "The House of Rothschild" に比肩する内容に仕上げたという著者の自信だ。『ハウス・オブ・ヤマナカ』はそれだけの作品なのだと思う。


ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商




2011/08/18(木) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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