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星条旗の下に生きたヒバクシャたち

NHK『渡辺謙 アメリカを行く』は、2009年に放送された第一回『星条旗の下に生きたヒバクシャたち』の方が、番組企画の視点が遥かに鋭い。日系人としてアメリカに生まれ育ち、しかし日本に帰っていた際に広島で被爆したという歴史は、その後の人生を一変させ、祖国を二分する。

自分が生まれた国アメリカが、祖国日本に原子爆弾を落としたという事実に絶望する者。そこからアメリカに対する憎しみが芽生え始める者。しかし日本国内においては逆に「アメリカ人」として敵視される者。一方で、アメリカ軍に入隊し文字通りアメリカ人として生きていく道を選んだ者。アメリカに再び渡り新しい暮らしをゼロから築き出す者。アメリカと日本という二つの国に挟まれ、胸が引き裂かれるような思いをした日系人の人たちが、少しずつ自分の過去を語り始める。

何人かの方々が番組の中で自分の人生を語られるが、とくに印象に残ったのが、数年毎に孫を連れて広島に帰り、平和資料記念館に行くというお祖母さん。アメリカで大学に通う孫娘は日本語を話すことはできず、顔立ちから日系人と判断することも難しいかも知れない。それくらいアメリカに根を下ろした彼女たちの家族の中にあっても、お祖母さんがこれまで戦争のことを語ることは少なかった。

しかしそんな彼女が忘れることができなかったのが、日系一世の父が遺した「戦争のことをアメリカで語り伝えなさい」という言葉。何度かの広島帰郷を経て、これまで直接言葉を交わすことの乏しかった孫娘にもようやく真意が伝わったと感じたとき、お祖母さんの目から涙がこぼれる。

僕はこの夏、山崎豊子の『二つの祖国』を読んだ。他の山崎作品と同様に、迫力ある筆致、鬼気迫る描写に何度も胸が締め付けられる思いがした。留学と移民は確かに全く異なるものだ。日本人留学生と日系人との繋がりが濃いわけでもない。しかし、もし留学のその先に、アメリカで働くこと、アメリカに住むこと、そしてアメリカで家族を養い子供を育てることを考えるのであれば、「二つの祖国」という問いは常についてまわるものだろう。どの日本人留学生にとっても、そう遠くはない将来の話を、今リアルに突きつけてくる一作。


二つの祖国 第1巻 (新潮文庫 や 5-45)

Amazon内容紹介
アメリカに生まれ、アメリカ人として育てられた日系二世たち。しかし日米開戦は彼らに残酷極まりない問いを突きつけた。日本人として生きるのか、アメリカ人として生きるべきか?ロサンゼルスの邦字新聞『加州新報』の記者天羽賢治とその家族の運命を通し、戦争の嵐によって身を二つに切り裂かれながらも、愛と祖国を探し求めた日系人たちの悲劇を浮き彫りにする感動の大河巨編。






2011/08/26(金) | America | トラックバック(0) | コメント(0)

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