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家族観の衝撃

アメリカの知人家族と付き合いが深まるにつれ、家族観について色々と考えるようになったことは、以前にも簡単に触れた。この冬、再びこの家族の元を訪れる機会があった。何泊かさせてもらう中で、以前より次第に打ち解けてきたこともあり、家族について、政治について、宗教について、今までよりももっと深く話をすることができた。

よく言われるように、こうした個人の価値観について話す機会はなかなか作りがたい。一つにはプライベートなことを話題にしない、という文化があるだろうし、もう一つは単純に僕自身の理解や知識が不足している、ということがあった。今回会うまでに、付け焼刃的ではあったとしても、出来る限り自分でも書籍を読む等して、理解に努めてきたつもりだ。そうした背景もあって、以前よりは突っ込んだ話ができたのだと思う。

まず最初に、この家族のプロフィールとは次のようなものだ。
・都市部から車で一時間程度の郊外に在住
・現在は白人夫婦二人(60歳代)で一軒家に生活
・子供4人はいずれも既婚・子持ちで近所(車で15分程度)に暮らす
・老夫婦は、旦那が中小企業を経営、奥さまは別途有職
・二人で日曜日の教会通いを欠かさない
・そして、共和党支持だ

現ブッシュ政権およびマケイン上院議員には否定的であったものの、それ以上に民主党のそしてオバマ上院議員のリベラルな考え方が受け入れられず、最終的には共和党支持を続けたと以前書いたのが、まさにこの家族のことだ。

さて、この老夫婦の長女とその夫の間には残念ながら子供が産まれなかった。そこで子供好きの二人は、養子をもらいうけることにした。その経緯についても話を聞くことができた。まず養子をもらい受けるプロセスだが、これが極めてシステマチックに行われている、という事実は最初の驚きだった。「エージェンシー」すなわち養子縁組みのための代理店が数多く存在するとのことなのだ。何ともアメリカらしいではないか。

この代理店がマッチング機能を発揮するためには、当然、養子をもらう側だけでなく、養子を出す側も必要になる。そして、アメリカには出す側もかなりの数がいるのだ。日本人として見ると信じがたい現状なのだが、その理由を聞けばよく分かる。結局はここにも個人の信条が色濃く表れているのだ。つまり、前に書いたように、中絶を認めない、という価値観だ。こうした人々は母親が望まない妊娠をした際にも、または産まれてくる子を育てられる経済環境にない場合にも、出産することをよしとする。そして、その受け皿となっているのが、まさにこの「エージェンシー」なのだ。不妊カップルが増加する現代では、とくにアメリカでは養子のもらい手には困らない。養子をもらう家庭はそれなりに経済的にも豊かであることが多いため、エージェンシーは彼らから費用をもらい経営を行っている。

こうした代理店を介し、長女夫婦は二人の養子をもらい受けたのだ。
一人目は黒人の赤ちゃん。今はずいぶん大きくなり、元気に走り回っている、かわいいやんちゃ坊主だ。しかし、この子の産みの親は分からない。父親どころか母親もだ。出産した後、母親が赤ん坊を置き去りにして病院を抜け出したのだという。どうしても見つけられなかったため、最終的にエージェンシーが引き受けたという経緯がある。そのため、長女夫婦がこの子をもらい受けたいと言った際にも、エージェンシー側は強くは薦めなかったという。つまり、通常のプロセスであれば、産みの母親が何らかの病気にかかっていないか、ドラッグ中毒の傾向がないか、といった点を審査し、きちんと情報公開しているのだそうだ。それが母親が探し出せないために、全く分からない。そのリスクを了解した上で、長女夫婦はこの子を長男としてもらい受けたのだ。

二人目は東欧系・トルコ系の赤ちゃん、かと以前は思っていた。が、全くそうではないことも今回初めて分かった。この子は同じ町に住む白人の母親が産んだ子供だという。そして、その母親はわずか14歳なのだ。養子にもらい受けるときには、この母親とも直接会い、またその家族とも会い、いわば家族同士のパーティのようだったと聞いた時には、何とも信じられない思いでいっぱいになった。しかし、こういう現実が普通にあるのだ。映画『JUNO/ジュノ』がまさにこのテーマを扱ったものだったが、それは特別なことでもなんでもなく、この地で日常的に見かける光景なのだ。

望まない妊娠であっても産みなさい、とは僕には言えない。ただ、それとは反対に、妊娠そのものを「神の贈り物」と大事に受け止める層がいるということ、そしてその贈り物が、産みの親から育ての親へ、極めて事務的に移動するプロセスを知り、とても複雑な気持ちになった。ここには、アメリカに根強い宗教観が、ビジネスという側面をともなって表れている。宗教とビジネスという相容れないと思われるような二者が、双方の利害が一致したことで共存している。これもまた一つのアメリカなのだろう。

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2009/01/10(土) | America | トラックバック(0) | コメント(0)

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