若き経済学者のアメリカAmerica ≫ 教育観の衝撃

教育観の衝撃

宗教観は、その家庭の教育に色濃く反映される。この老夫婦には孫が何人もいるのだが、その子たちが通うのが、地元のクリスチャンスクールだ。クリスチャン以外も入学可能らしいのだが、当然の如く、ほぼ100%クリスチャン家庭の子供たちが通っている。

この学校では、聖書に基づいた教育を行っているため、前回書いたように、「神の創造論 (creation)」を教えることになる。進化論のような、彼らにとっては神を冒涜するかのような理論は、教えない。なんと偏った!と言ってはいけない。ただ、この子たちの将来を案じてしまう気持ちはある。それは、進化論を知らないまま育つのか、という程度の心配ではない。そうではなく、そもそも彼ら彼女らと違う価値観を持った人たちがいる、ということを知りえないことに対する不安だ。

小学校から高校までの一貫教育だ。その期間は長く、かつ同じクリスチャンとしか触れ合う機会がない。休日・祝日はこれまた教会で、また別のクリスチャンコミュニティと交わる。ようやく、「違う世界観」「違う価値観」があると知るのは、せいぜい大学入学の頃になるのではないだろうか。だがそのときは、この子たちも18歳だ。もう確固とした考えができあがっていることだろう。そんな彼ら彼女らの前に、キリスト以外の神を信じる人や、人間が猿から進化してきたと信じる人が現れる。そのとき受けるであろうこの子たちの衝撃は、今回僕が受けたそれとは比較にならないほど大きく深いものとなるはずだ。

この国には、様々な人種が集まった。アフリカン、ラティーノ、アジアン。マイノリティーと呼ばれ続けた人たちも、今や相当数に上り、もはやマジョリティーといってもよいくらいに膨れ上がっている。こうした状況の今日では、ひょっとしてクリスチャン、とくにこの夫婦のような保守的な "Bible-believing" の層こそが、新たなマイノリティーなのではないだろうか。そしてそのことをこの老夫婦も感じ取っているようだ。新たな大統領の "Change" の掛け声のもと、リベラルな考え方がより広まり、彼らの生活が変えられてしまうことを恐れている。だからこそ、同じ神を信じ、同じ信条を持つ、「同志」たちとより結束しようとしているように感じられるのだ。そして、結束しようという内向きの力学がますます彼らをマイノリティーにしていくのではないかと案じられる。

いずれにしろこの国は大きな変化の節目にあるのだろう。マイノリティーがマジョリティーに変わり、そのマイノリティーの層から新たな大統領が選ばれた。それを歓迎する人たちが数多くいる傍らで、この老夫婦のように、苦々しい思いをしている人たちもいるのだ。僕個人でできるようなことは何もない。ただ願わくば、この老夫婦が、アジアのはずれの日本という国からやってきた僕に対して優しく接してくれるように、他の宗教や人種に対して少しでも寛容になってくれたら、と思うのだ。

kids.jpg



2009/01/12(月) | America | トラックバック(0) | コメント(0)

«  |  HOME  |  »

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL
http://theyoungeconomist.blog115.fc2.com/tb.php/38-38f53463
 |  HOME  |