若き経済学者のアメリカBooks ≫ 科学のモノサシ:度量衡の物語

科学のモノサシ:度量衡の物語

自然界にある数々の定数が求まり、それらを基点に正確にモノを測る・量る・計ることが出来るようになったとき、次に必要になるのは何か?それがモノサシ。僕らは今でこそ当たり前のように、メートル・グラムといった単位を使っているが、それらが世界標準になるまでには議論と時間、すなわち相当の忍耐が必要であった。(現在もその標準から外れた国に住んでると大変に忍耐を強いられたりするんだが・・・、まあ何とかアメリカのマイル・ポンド・ガロンで生活しています。)

さて、そんなサイエンスにおける単位の歴史を取り上げたのが本書 "World in the Balance"。科学史の舞台裏を覗くようなスリルに満ちた、秀逸なアプローチだと思う。表紙デザインが印象的な「世界でもっとも美しい」シリーズを著した哲学教授ロバート・クリースによる最新作である。

彼の前2作のうち、僕はまだ「科学実験」の方しか読んでいないのだが、ガリレオの加速度実験、ヤングの光干渉実験、ミリカンの油滴実験等々、こちらも懐かしい名前が続く。著者がこうした独創的な実験を「美しい」と評するだけでなく、実験者自らが「美しい」というメモを残しているというエピソードには科学者のマインドを見るようだ。

世界でもっとも美しい10の科学実験 世界でもっとも美しい10の物理方程式


著者が本書 "World in the Balance" の中で強調するように、自然界の定数と同様に、こうしたモノサシも常に固定されている必要がある。今日の1メートルと明日の1メートルが異なるのはとても困るし、僕の1リットルが彼の1リットルとずれてしまうのはまずい。しかし、"feet" の単位名が名残を残すように、その昔は誰か(権力者)の体の一部を基準にするなど、随分と曖昧なままだったのである。

厳密にサイエンスを発展させていくためにも、単位の確立が必要不可欠の急務だったのは想像に難くないが、本書を読み最も意外だったのが、現在でもまだ曖昧さを残したままの単位が使われているという事実。それがなんとキログラム。1キログラムの基準として保管されている重さが徐々にだが変化している可能性があるとのこと。

最近でも、光速がもっとも速いスピードだと長いこと信じられていたのが、いやそうではないかもというのが少し前のニュースになり、しかしその実験はどうやら誤りの可能性大と先日報道されたように、サイエンスの世界でもまだ確実には言えないことが多々あるのである。我々の身の回りにある度量衡も、僕らが思っている以上にあやふやな基準なのかも知れないね。

World in the Balance: The Historic Quest for an Absolute System of Measurement




2012/03/21(水) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

«  |  HOME  |  »

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL
http://theyoungeconomist.blog115.fc2.com/tb.php/389-71b84a9d
 |  HOME  |