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老後観の衝撃

老夫婦(60歳代後半)の父親にも会う機会があった。御歳90前後ではないだろうか。地元の老人ホーム(nursing home)に入居しているとのこと。自宅の夕食に招くということで、このホームまで一緒に迎えに行った。

アメリカの老人ホームは富裕層向けで、食事も設備も豪華と聞いたことがあったし、とくにフロリダあたりには広大な敷地に老人向けの「町」があるとも聞く。だからこそ、この父親が入居するホームも立派なものなのだろうと予感した。実際に、彼が支払っている金額は、毎月7,000ドル(約65万円)だそうだ。なんとまあ。そんじょそこらのサラリーマンの月給よりもはるかに多い金額を、労働所得のない御老人が支払っているわけだ。

どうやったらそれだけの金額を出せるワケ?

実に簡単なことだ、若い頃からの投資だ。実際、90歳を超えるこの父親も、そのおかげで今の生活がある。これもまた極めてアメリカ的だと感じる。自分の老後資金は、自分で計画・設計し、運用し、蓄積したということか。もちろんフィナンシャルプランナーに相談などもするだろうが、基本的にはまさに自分の責任において蓄財したのだろう。立派なものだと尊敬の念を抱くと同時に、それもまた大変なことだなと思う。

さて、その父親が入居するホームだが、予想に反し、決して豪華とは言えないものであった。むしろ、「え?この施設で65万円も払わないといけないのか」というショックを受けた。僕の祖父が亡くなった普通の病院のレベルとしか思えない。祖父が当時毎月いくら支払っていたのかは分からないが、まさか65万円ということはあるまい。その十分の一もかかっていないのではないだろうか。

アメリカとはそういう国だとまたも思い知らされた気がする。社会保障の制度が本当に整備されていないのだ。老後を迎えても国が助けてくれるわけではない。必要な資金は基本的に自分もちだ。でも、この父親はこの国では恵まれている方なのだろう。日本の何倍もの費用を払い続けているが、それでもそれだけの資産を築くことができたのだから。では果たして、そこまで蓄財できなかった人々はいま、一体どこで、どのように暮しているのだろうか。そう考えると空恐ろしい気持ちになった。

ヒラリー・クリントンが取り組んできた社会保障の制度づくり。これまでは、何を今さら、という思いがかなりの部分を占めていた。しかしここで、この父親の老後生活を垣間見て、それが極めて大きな社会問題なのだと、実体をともなって理解することができた。景気後退期のこの国で、不況だからこそ必要になる社会保障制度を今から整備しようというのは、とてつもなく大変なことだ。どうするアメリカ!?



2009/01/13(火) | America | トラックバック(0) | コメント(0)

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