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『日本のエネルギー革命』と石油の世紀

『「就社』社会の誕生』および『若年者就業の経済学』については以前書いたとおりだが、これら2冊とともに、2011年の日経・経済図書文化賞に選ばれたのが『日本のエネルギー革命 -資源小国の近現代』(小堀聡)である。原子力を中心としたエネルギー政策に大幅修正を余儀なくされた2011年の日本にあって、本書もまた極めてタイムリーな受賞だったと言えるだろう。

日本のエネルギー革命 -資源小国の近現代-

本書における「エネルギー革命」は1950年代および60年代にかけて、日本が利用するエネルギーが石炭から石油へとシフトしていったことを指す。よく知られたこの転換は、従来は原油価格の国際的な低下という供給側の外的要因から説明されることが多かった。それに対し著者は需要側に目を向け、「熱管理」というエネルギー節約的な技術が重油への期待を高め、石炭からの転換を促したのだと分析する。副題にある通り「資源小国」である日本の、省エネ意識・省エネ技術の源流を見ることができる。また著者は、供給側についても、タンカーの大型化や港湾の整備等、価格ではなく一貫して技術革新に着目して「エネルギー革命」を説明する。

ただ、個人的な感想ではあるが、このタイミングで読むにしては、原子力を始めとする他のエネルギーへの言及がないこと、石油にフォーカスするにしても世界の地政学的な視点に欠けること、そして重油が金融商品となっていった背景に触れていないこと等々、もう少し幅広い視点から石油を再考してみたかったという思いは残る。しかしそれは本書の問題意識とは異なるものであり、またそうした基礎知識は以下の新書で十分に抑えることができたので、些細な指摘に過ぎないだろう。原子力のリスクに世界が敏感になった今、今世紀もまた「石油の世紀」となる可能性は以前より遥かに大きくなったと言えるだろう。


石油を読む―地政学的発想を超えて (日経文庫) 資源を読む (日経文庫)




2012/02/29(水) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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