若き経済学者のアメリカJapan ≫ 日本語は本当に亡びるのか?

日本語は本当に亡びるのか?

2008年に出版され大きな話題を読んだのが、『日本語が亡びるとき』(水村美苗)そして『日本語は死にかかっている』(林望)という刺激的なタイトルが付けられた二冊だった。とくに前者は、梅田望夫氏が紹介したことをきっかけに、ネット上で書評・話題が相次いだのはまだ記憶に新しい。

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で 日本語は死にかかっている (NTT出版ライブラリーレゾナント047)

それに真向から反論した2010年出版の書『日本語は亡びない』(金谷武洋)をようやく読んだ。そのタイトルからしてはっきりとしたスタンスを取っているのだが、内容はそれ以上に硬派といえるだろう。現在モントリオール大学で日本語教育に携わる著者は、日本語だけでなく英語・フランス語の歴史にも触れながら、日本語の将来を展望する。

個人的な読みどころは三点。一つ目は、安倍晋三・福田康夫・麻生太郎という元首相三人を題材に、確かに日本語の乱れは明らかだという指摘。一方で、「そのことに眉をひそめ、何の躊躇もなく『これはひどい』と評価を下せる一般大衆の教養、とりわけ日本語力の高さ」という指摘は何よりも新鮮だった。

二点目は、モントリオールという都市在住ならではの著者の指摘だが、仏語の攻勢に押され、世界から「死にかけたのは英語の方」という点。英語の動物名や料理名に今も名残を残す仏語単語を取り上げ、英仏言語戦争を振り返る。

そして三点目は、なぜ日本語は亡びないのかを「二人のみゆき」を題材にして提言する最終章。まさかここで「宮部みゆきの下町」と「中島みゆきの地上」というトピックを見ることになるとは思わなかった。しかし、ファンならまさに納得そして感涙の、そうでないなら彼女らの作品に改めてもしくは初めて触れてみたくなる、そんな解説が続くのである。書きぶりにもいっそう熱が帯び、ここはもう必読といっていいだろう。

著者が言うように、「日本語は大変人気があり、学習者の数もうなぎ上りで、そう簡単に『亡びる』ようにはとても思えない」。それは確かに、前回書いたように、僕個人の体験としてハリーやアスカと接することでも実感することである。しかし、僕らはつい日本語を学んでいる外国人を見ると、「なぜ日本語を選んだの?」と聞いてしまう。僕もそうだったし、ハリーやアスカは既に幾度もその質問をされたことがあるらしく、その度にもううんざりという顔をしていたのを思い出す。

そう尋ねる僕らの根底にあるのは、「なぜ日本語などというマイナーな言語を?」「なぜフランス語やスペイン語を選ばないのか?」「なぜ話者の多い中国語でないのか?」という疑問だろう。しかし、そんな考え自体がおかしなものだというのが、本書を読み僕が感じ取ったことである。きっかけは様々であっても、面白い、好きだ、学びたい、そこに理由なんかいらないんじゃないだろうか。そんなふうに、本書は改めて日本語というものを考えるのに最適な一冊である。ただし、バランスを取る上でも「英語こそが唯一絶対のグローバル言語」を主張する他の書籍と合わせて読むのがオススメ。


日本語は亡びない (ちくま新書)




2012/03/16(金) | Japan | トラックバック(0) | コメント(0)

«  |  HOME  |  »

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL
http://theyoungeconomist.blog115.fc2.com/tb.php/427-5a7abb65
 |  HOME  |