若き経済学者のアメリカArt ≫ 寡作と盗作と贋作のフェルメール

寡作と盗作と贋作のフェルメール

フェルメール人気の一部は、作家や作品が持つ謎めいたエピソードにある。まずもって、フェルメールは寡作の画家である。もちろん、たくさん描いてたくさん失われた可能性もあるだろうが、現在世界で三十数点しか残っていないというのは、レンブラントと並び17世紀のオランダ美術を代表する画家としてはあまりにも少ない。その希少性が人を呼び集める。「全点踏破の旅」が可能なのは、それだけ数が少なく、かつオランダ・デルフトを含めても世界の少数の都市に集中して現存しているからこそなのである。おそらく僕も、近いうちにオランダに「巡礼」に出るだろう。

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版) 謎解き フェルメール (とんぼの本)

次に、大変不運なことに、フェルメールは盗作としてもよく知られる。フェルメール作品はこれまで美術盗難の格好のターゲットとなってきた。以前にも書いたように、1990年にボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館から盗まれた作品は、現在もまだ事件解決をみていない。しかしなぜ僕らはこんなにも美術盗難事件に惹かれるのだろうか。それは漫画『キャッツ・アイ』にまで遡っても見られるように、銀行強盗で現金を狙うのではなく、あえてアート作品に的を絞るという特殊な動機そのもの、そして警察との知的格闘といった点にあるのだろう。『FBI美術捜査官―奪われた名画を追え』では、ガードナー美術館で盗まれた作品を取り返す千載一遇のチャンスを、FBIの組織的へまによって逃してしまったことがスリリングに描写されている。事実は映画よりも奇なり、と思わせてくれるのもまた、フェルメールならではなのではないだろうか。

盗まれたフェルメール (新潮選書) FBI美術捜査官―奪われた名画を追え


最後に、輪をかけて不幸なことに、フェルメールは贋作とも関係が深い。漫画『ゼロ』の世界だ。つまるところ上記の盗作とも絡めて、フェルメールは美術界のダークサイドから常に付け狙われている存在なのである。稀代の贋作者ファン・メーヘレンは完璧とも言える模倣技術を身につけ、次々とフェルメール作品を「創造」していった。しかしその結果ナチスに追われることとなり、自分の命を守るために最後に彼は、自分が偽物であることを告白する。『私はフェルメール』は、そんな彼の数奇な人生を描いた傑作ノンフィクション。数少ない作品が盗作に遭い、贋作に騙され、フェルメールはいま何を思うだろうか。もっと大量に作品を遺していればこんなことにはならなかったかも知れない。しかし最初の謎に戻るならば、なぜそもそも彼はこれだけの数しか残さなかったのか、そしてそれをいつどこで誰のために描いたのか。そうした疑問にはいまだ答えが出ないことも多く、だからこそ世界中の視点を集め続ける要因ともなっているのだ。

私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件 偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件




2012/07/20(金) | Art | トラックバック(0) | コメント(0)

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