若き経済学者のアメリカBooks ≫ 羽生と将棋と大局観

羽生と将棋と大局観

羽生善治『大局観』を読んだ。前作『決断力』以上に読み応えがあるのは、羽生が「負ける」ことについて赤裸々に語っているからだろう。とくに本書まえがきでは、羽生が3連勝した後に渡辺明に4連敗した、2008年の竜王戦七番勝負の回想から始まる。将棋界史上初の、タイトル戦3連敗4連勝という試合は今や伝説であるが、それ以上に羽生が自身の敗北についてこんなにも正直に語っていることに僕は驚いた。

ただ、一つだけ言えることはこの「三連敗四連勝」で私の棋士としての人生観にも変化が訪れたのであった。


そして実際に本書の中では、第三章をまるごと「負けること」に充てている。本書の一番の読みどころは間違いなくこの章であろう。若き天才・羽生善治も今年で42歳。負ける経験を重ね、そして負けることについて思考を深めた結果、彼が辿り着いた結論は、「若い頃の勢いを取り戻そうと考えるより、現在、四十歳の自分ができることをやる方が、健全だと考えるようになった。」ということ。だからこそ、「今は経験を積んだ『大局観』でさまざまな角度からアプローチできるようにと思う。」という境地に至ったのだろう。それだけのプロセスを経て述べる「大局観」なのである。

最後に、「これから六十歳、七十歳になっても伸びる能力はまだまだあると思っている。」という羽生の考えは、本当にそう確信していなければ決して出てこない一言だろう。彼が繰り返し主張するように、「続けることこそが才能」であるならば、継続力の衰えない羽生に死角はない。羽生はこの先も不世出の天才と呼ばれるに相応しい、決断力と大局観、そして継続力を持ち合わせているのだから。


大局観  自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21) 決断力 (角川oneテーマ21)




2012/10/23(火) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

«  |  HOME  |  »

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL
http://theyoungeconomist.blog115.fc2.com/tb.php/495-d16a790e
 |  HOME  |