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今学期の学び

先学期の学びは、AssumptionImplication だった。この2つの視点から、経済モデルのエッセンスを学び、モデルの妥当性を検討した。経済学の基本的作法の事始め、といったところだろう。それに対し、今学期通しての学びは、同じく二言で表わすならば、Literature と Justification だ。これは今学期どの科目でも、相当数の論文を読み進めていったことによる。

Literature の日本語訳は、一般的には「文学」「文芸」となるが、アカデミックには「文献」「論文」を指す。そしてより集合的には、「既存研究」全体をも指す。しかし、この literature という言葉の響きには、「既存研究」や「先行論文」といった表層的な文言以上の、それこそ文学的な奥深さがあるように思うのだ。英語でも、previous research と言うとどうしても薄っぺらさが拭えないが、literature と言うときには、研究の蓄積とその歴史の重みに対する、畏敬の念が込められているように感じられる。経済学のモデルやコンセプトがこれまでどのように発展してきたかを、代表的な論文を通し、尊敬とともに学んでいったのが今学期だったと言えよう。

それでは、どのような論文が歴史に名を残すのか。それが、Justification だ。例えば、ゲーム理論の均衡概念や、計量経済学の推定量のように、理論の発展には常に新たなコンセプトが求められる。既存のコンセプトでは説明しにくい/できない事例が発見され、その解決策としていくつものコンセプトが提案される。しかし、「提案」を「定着」に変えるのは容易ではない。自分のコンセプトが他よりもうまく現象を説明できていると、説得できなくてはならないわけだ。それを正当化する(Justify)ことができなければ、残念ながらそのコンセプトは歴史に埋没することになる。

歴史の重みは同時に、歴史という壁の高さのように思える。研究の進捗はしばしば登山に例えられることが多いが、むしろこの歴史の壁をよじ登るという、ロック・クライミングの方が実感に合う。まず、この壁の高さに圧倒され、この壁を築いた先人たちを畏れる。そして次に、先人が打ち込んだくさびを頼りに、それをよじ登る。しかし、登りきったところがようやくスタート地点なのだ。

Literature に敬意を表しつつも、そこにある欠陥を見つけ、自分の手で Justification を進めていく。それが論文の価値であり、理論の発展に対する貢献であり、そして新たな歴史をつくるということなのだろう。そのための準備がまさにこの一年間だったわけだ。ロック・クライミングに必要な道具を揃え、使い方を学び、その危険性も認識した。先は長い。だけど、その先を見据えて一歩を踏み出す準備と心構えはできたように思う。次の一年は、一歩、二歩と、ゆっくりとでも確実に歩みを進めていきたい。

2009/05/18(月) | Class | トラックバック(0) | コメント(3)

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渥美クライマックス

『literature』

"literature"の意味や深さ、大変興味深く拝見しました。と言うのも、先日Princeton University で聴講したLibrarian たちによるパネルディスカッションでやたらと"literature"という言葉が出てきて引っかかっていたからです。ありがとうございました。

http://www.princeton.edu/main/news/archive/S24/20/84O01/index.xml?section=announcements

2009/05/21(木) 07:30:28 | URL | [ 編集]

C

『落石注意!』

登山のような研究生活・・。
落石がどこから来るかわかりません。
足場注意!
振り落とされないように、、
しっかり登っていってください!
ファイト!

2009/05/21(木) 17:13:59 | URL | [ 編集]

tamago

『Re:』

> 渥美クライマックス さん
ディスカッションの様子、興味深く拝見させて頂きました。ありがとうございます。
また、literature の語源について、以下に、興味深い言及がありました。
http://www.ps.ritsumei.ac.jp/college/2cols_read.cgi?key=2col2006514192135
さらなる参照元がどこなのか分からないのですが、言及内容には納得でした。

> C さん
応援ありがとうございます。いや、本当に危険な道のりです。
頭上の落石にばかり気をとられていると、足元が滑落しそうです・・・。
気をつけて、その上を目指して、一歩ずつよじ登ろうと思います。

2009/05/24(日) 11:57:06 | URL | [ 編集]

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