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山中伸弥先生に、iPS 細胞について聞いてみた

ノーベル賞関連のニュースを全くフォローしていなかったため、遅まきながらようやく、iPS細胞とは一体どういうものなのか、山中教授の研究のインパクトがどのようなものなのかが分かったような気がする。

それにしてもこの本おもしろい。内容自体は先日放送されたNHKスペシャルと重なるところも多いが、本書『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』の方が、彼の人柄が滲み出ているように感じる。また、米国留学時代の経験や、世界を相手に研究で勝負し続けるマインドとスキル等々、サイエンス以外の日本人留学生つまりは僕のような者にとっても、大変興味深いエピソードが散りばめられている。

例えば、米国の研究室で毎週行われたプレゼンのトレーニングや、V(ヴィジョン)とW(ワークハード)というキーワードを叩きこまれたこと等。そして個人的に興味深かったのが、研究成果をどのジャーナルにどう投稿するかという戦略。とくに2005年には韓国ソウル大学・黄教授の論文捏造事件が発覚し、その煽りで山中チームは慎重に研究成果を見直し、発表戦略を練り直すことになる。

また、トップジャーナルのエディターや、世界の研究者とのネットワーキングの重要性については、昨年刊の『「大発見」の思考法』の中で、より詳しく紹介されている。それこそ「有力科学誌のエディター達とファーストネームで呼び合えるくらいの信頼関係を築いておかないと、情報戦には勝てない」というコメントは、研究内容そのものと同等かそれ以上にいかに自分を世界にセールスしていくかが重要だという指摘になろう。

iPS細胞の i だけが小文字であるのも、当時爆発的な人気を博した iPod に倣ったという茶目っ気あるネーミングなのだが、この用語が普及したのは「そういうネットワーキングのおかげ」でアメリカの研究グループが論文の中で使ってくれたことが大きかったという。

国際政治またはビジネスの場で、グローバルな標準・規格づくりが苦手な日本としばしば言われるが、山中伸弥教授のノーベル賞受賞は、いかに世界とネットワークし、いかにその中で自分の場所をつくって貢献し、そしてその価値を伝えていくか、そのマインドとアプローチを見直す機会を与えてくれたのではないだろうか。


山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた 「大発見」の思考法 (文春新書)




2012/12/10(月) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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