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若き経済学者のアメリカEconomics ≫ 統計学が最強の学問である、という愛と幻想

統計学が最強の学問である、という愛と幻想

いま話題のベストセラー『統計学が最強の学問である』を読んだ。書名を手始めに、中身を見ても「統計リテラシーのない者がカモられる」「統計学を制する者が世界を制する」「すべての学問は統計学のもとに」といった文言が散りばめられ、なかなかに鼻息が荒い。



もちろん僕はそういうアツさが決してキライではない。だから確かに一読の価値はある内容だとは思う。ただ、「これからの10年で最もセクシーな職業」というハル・ヴァリアンの有名な台詞に言及してはいるものの、本書の中身からは統計学のセクシーさが最後まで伝わって来なかったのが、個人的にはとても残念でならない。

以下の3冊と比肩するくらいの、セクシーでワイルドでエキサイティングな統計学書が登場したかと思ったのだが、果たしてそれは期待し過ぎだっただろうか。






それでも、『統計学が最強』の著者も一ついいことを言っている。それは現在のビッグ・データ狂騒に対し、スモール・データで十分なんだと、冷静な意見を提示している点である。しかし、そういう懐疑的な視点はデータに対してだけでなく、統計学の手法そのものにも向けて欲しかった。

例えば、先日「裸の統計学」で書いたように、最近出版されたばかりの "naked statistics" や、アメリカの大統領選挙の結果予測で注目を集めた "The Signal and the Noise: Why So Many Predictions Fail-but Some Don't"。どちらも優れて読みやすい良書だが、何よりも統計学の弱点にまで言及している点は極めて真摯な姿勢だと言えるだろう。





そして、もう少しテクニカルな内容まで解説しているものの、統計学に対する哲学が素晴らしいのが、「ときには真珠のように」で紹介した、David Freedman の以下の2冊。Freedman は統計学を学び修め究めながらも、その手法に対しては常に疑いの目を向けることを忘れなかった。

統計学の手法、もっと広く言えば数理モデルを用いて何かを明らかにしたとか、原因を突き止めたといった断定的な物言いには、相当の注意が必要であると、統計学者である彼自らがそう警鐘を鳴らす。自分が用いる手法に対してもその不完全さを認識し、健全な批判精神を忘れないこうした姿勢こそを、真に知的と言うのではないだろうか。


Statistics Statistical Models: Theory and Practice



日本語の統計学入門書であれば、「増える統計学ニーズと、高まるオンライン講座への期待」という記事や、「経済学・統計学の定番教科書」で紹介したように、以下の3冊をお薦めしたい(この順番でレベルが高くなる)。







2013/03/04(月) | Economics | トラックバック(0) | コメント(0)

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