日本を発つ前、同じく経済学で留学した先輩から餞別を頂いた。それがこの水村美苗『私小説―from left to right』だった。そのときの僕は恥ずかしながら著者の名前を知らなかった。彼女の名前を知るのはそれから数ヶ月後、彼女の新刊『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』が話題になったときだった。そのときは絶版になっていたこの『私小説』をわざわざ古書で探してきてくれた先輩の思いやりが心底うれしかった。
「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカに溶け込めず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国をためらい続けてきた。雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を通じて浮き彫りになるものとは・・・。
その先輩が言う。留学は苦しいものだ。楽しく始まるかも知れないが、必ず辛い時期を迎える。そんなときこの本を読むといい、と。 先輩、ついに、この本を読むべき日が来たようです。今から、読みます。
その他に読んでおきたいオススメは、なんといっても、「留学前にやっておきたかった読書(ココロ構え編)」で詳しく紹介した6冊。
2009/06/08(月) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)