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美術品盗難事件と来歴のミステリー

2000年に世田谷の住宅から盗まれたルノワール作品が、サザビーズの競売で1.5億円で落札されていた、という先日のニュース。

(東京新聞)警視庁成城署が窃盗事件として捜査したが、容疑者は特定されていない。海外には盗難美術品のデータベースがあるが、この油絵は登録されておらず、競売会社の盗品チェックもすり抜けたとみられる。盗まれた名画をめぐる国際協力の在り方に課題を残した。(中略)男性は返還を求める意向だが、購入者の特定や返還請求の期限の問題があり、取り戻すのは難しい。サザビーズは取材に対し、顧客情報は極秘として出品者や落札者を明らかにしていないが「(出品時の)調査では出品者は正当な持ち主で、保証もあった」と回答した。出品者は〇〇年に絵を取得したといい、盗まれてから短期間のうちに買い手が付いたとみられる。



盗まれた美術品が闇マーケットで取引されることは多々あるだろうが、これだけの金額がつく作品が、オークションハウスを通して堂々と売買されるということは、そう多くはないように思う。犯人(グループ)がそれだけ万全に「来歴」を偽ったということなのだろう。



その来歴を扱ったノンフィクションの傑作が、以前にも紹介した『偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件』。本書は贋作の来歴捏造を追ったものだが、今回のルノワール事件では盗作の来歴が捏造されたということなのだろう。



美術界を震撼させた事件のドキュメンタリー。「来歴」とは美術品が作者の手元を離れてからたどった経歴のことをいう。美術品売買では重要な要素のひとつであり、作品そのものの質よりも来歴が価値を決めることも多い。




美術品というのは、厳重な警戒をしているはずの美術館からもよく盗まれる。そして、寡作のフェルメールは、不幸なことにしばしば盗難のターゲットとなってきた。米国史上最大の美術品盗難事件の舞台となった、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館。そこから盗まれたフェルメールの「合奏」は、事件発生後20年以上を経ていまなお行方不明のまま。同美術館には、いまも空の額縁が掲げられたまま、主の帰りを待っている。


・アメリカ史上最大の美術品盗難事件、いよいよ解決か

・寡作と盗作と贋作のフェルメール






『海賊とよばれた男』が引き続きベストセラー中となっている、今年の本屋大賞だが、個人的には原田マハ『楽園のカンヴァス』も大変おもしろく読んだ。美術館のキュレーター、オークションハウス、アートコレクター、そして美術盗難専門の警察官等々、これでもかと役者が揃った極上のアート・サスペンス。ルソー作の『夢』ばかりか、MoMAやテート・モダン、そしてサザビーズ等々、フィクションでありながらこうした実名が次々と登場するのは何ともリアル。

原田マハ自身がキュレーターとして美術館で働いた経験があるため、緊張感をもって展開するストーリーと同時に、細部に渡ってアート業界の薀蓄が散りばめられているのも読みどころの、お薦めの一冊。

・アート・サスペンス『楽園のカンヴァス』がすごくよかった






2013/08/11(日) | Art | トラックバック(0) | コメント(0)

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