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世界最長のアメリカの鉄道と、世界最正確の日本の鉄道

アメリカはその国土の広さもあって、現在世界最大の鉄道ネットワークを築いている。ところが、日本やフランスやスイスと比べると、圧倒的に利用率が悪く(参考:Railway Statistics (PDF), Wikipedia)、Why don't Americans ride trains? という Economist の記事


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アメリカで鉄道が利用されない理由は様々で、国土が広すぎるゆえに長距離移動は飛行機の方が便利で安いという面もあれば、モータリゼーションゆえに短中距離移動なら自動車で十分ということもある。もちろん、鉄道の発着時刻にしばしば遅れが目立つという点も大きな課題となっている。

翻って、それではなぜ日本ではこんなにも鉄道が利用されるのか?とくに鉄道ダイヤは如何にしてこれほど高度に発達したのか、という問いに対し、三戸祐子『定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』ほどユニークに答えた書籍はないように思う。

以前に紹介したように、本書の面白さは、時刻表づくりといったテクニカルな面だけでなく、江戸時代の参勤交代にまで遡った歴史的な視点にある。

「BOOK」データベース内容紹介
電車が2~3分遅れるだけで腹を立てる日本人。なぜ私たちは“定刻発車”にこだわるのか。その謎を追うと、江戸の参勤交代や時の鐘が「正確なダイヤ」と深く関わり、大正期の優れた作業マニュアル、鉄道マンによる驚異の運転技術やメンテナンス、さらに危機回避の運行システムなどが定時運転を支えていた!新発見の連続に知的興奮を覚える鉄道本の名著。



戦がなくなった平和な時代、武功ではなく管理すなわち「マネジメント」が下級武士を出世へと導いた。その中でも参勤交代は、時間および予算規模の大きさ、そして我が藩の権威と格を見せつける対外的アピールという面からも、絶対に失敗の許されない「プロジェクト」であったのだ。

北の津軽から南の薩摩まで、全国津々浦々の「プロジェクトマネジャー」たちの手配(行進・休憩・食事・宿泊・トラブル対応等々)に、現代日本に張り巡らされた鉄道網とその安全確実な運行の源流を見るのは、極めて秀逸な視点だったと思う。

アメリカの鉄道なんか乗ってられん、というのは全くもってその通りなのだが、日本で鉄道網とダイヤがこれだけ発展した背景にはそれだけの理由があるのである。日本の歴史や文化論としても読むことができる内容であり、鉄ちゃん以外にもオススメしたい一冊だ。






2013/09/08(日) | Books | トラックバック(0) | コメント(0)

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