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いよいよアメリカを離れるときがやってきた

シアトルでゴールを迎えた西海岸縦断ドライブの終わりは、僕のアメリカ生活に終わりを告げるものでもあった。2008年7月に渡米し9月に経済学部博士課程に入学、そしてこの夏、Ph.D.を取得して卒業を迎えた。

5年間の米国生活というのはそれなりに長い時間だったように思う。キャンパス内で学ぶことだけでなく、キャンパスの外でも多くの人にお世話になり、アメリカの歴史や暮らしや価値観に触れる機会があったことに、今とても感謝している。

その中でも一番のありがとうを伝えたかったのが、何度も遊びに行かせてもらったアメリカ人老夫婦。シアトル空港から最後の電話をかけた先も、この二人だった。


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彼らとの会話は、それこそ会ったばかりの頃はすべてが驚きだったと言ってもいい。まずは彼らの宗教観。ブッシュ前大統領と同じ福音派(Evangelical)と呼ばれるグループに属し、進化論を否定し、あくまでも聖書に忠実に、神による創造論を信じている。彼らが通うメガチャーチに連れて行ってもらったばかりか、新しく教会を設立するという極めて重要な場面でプロジェクトメンバーとして参画させてもらったことも、何にも代えがたい貴重な経験となった。

1.福音派と創造論と宗教観の衝撃
2.新興住宅街に屹立するメガチャーチの衝撃
3.アメリカで教会の新規立ち上げに加わってみた


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続いて彼らの家族観やその周辺のシステムにも驚かされた。具体的には、老夫婦の長女夫婦が現在までに養子を3人もらっているのが、そのプロセスが極めてシステマチックであることに強烈な印象を受けた。十代半ばで妊娠したものの宗教的な理由から中絶という選択を取らない、養子の「出し手」がいて、赤ん坊を引き取って今度は適切に「貰い手」を選ぶ代理店(エージェンシー)がいて、そしてようやくこの長女夫婦のもとにその赤ちゃんが養子としてやってくる。

4.養子とマッチングとエージェンシー


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一方の次女夫婦は4人の子供に恵まれた。しかしその次女が決断したのが、アンジェリーナジョリーと同じ乳房切除手術。母方の家系に乳がんで亡くなる親戚が多く、実際に遺伝子検査をしてもらったところ、将来のがん発症可能性が極めて高いと医者に診断されたそうだ。

手術後の経過は順調だったようだが、新しい医療法のほとんどがそうであるように、今回の遺伝子検査や手術法の効果を判断するにはさらなる年月が必要だ。それでも、やらないリスクよりは、やるリスクを取ったこの次女(そして続いて長女も)の決断に、アメリカ的なリスク観をあらためて感じるのだった。

5.アンジェリーナ・ジョリーと乳がん予防とリスク観


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その他、彼ら夫婦の近所には、電気を使わない生活を今も続けるアーミッシュが暮らしている。馬車に乗って移動する姿を目撃したり、税金控除等で優遇されている現状、そしてそういうこともあって近隣のノン・アーミッシュの人たちからは少々煙たく思われている様子なども見聞きすることができ、アメリカにある多様性と確執をここでも感じた。

6.電気も憎しみもないアーミッシュの暮らし
7.イメージとちょっぴり違う、現代アーミッシュの現実



このように、僕はこの老夫婦とその家族を通じて、アメリカの社会と生活を垣間見ることが多かった。そしてこれは学内の友人とはずいぶんと異なるものであり、しかし一方では今もアメリカの一定数を占める人たちでもある。

そういう友人を学外に持て長い付き合いを続けられたことに、僕はアメリカを離れるにあたって今もっとも感謝しているのである。




2013/09/24(火) | Others | トラックバック(0) | コメント(2)

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2013/09/24(火) 22:31:01 | | [ 編集]

tikin

『Re: ネ兄』

ありがとうございます!日本に帰ってきたところですが、メシうまいっす。
今後お会いする機会がありましたらどうぞよろしく!

2013/09/25(水) 11:09:05 | URL | [ 編集]

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