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フィリピンの台風被害とアメリカの寄付行動

国際大学にはフィリピン政府からの派遣留学生も多く、僕が今学期担当している統計学のTAも一人はフィリピンの留学生だ。だから今回の台風被害は決して他人事ではなく、学内でもファンドレイジング等が行われ、僕も寄付をした。

ここで思い出すのはアメリカでの寄付・募金について。2011年の東日本大震災発生時、僕はアメリカにいたのだけれども、その後各地で展開された寄付や募金のあり方に、大変アメリカ的なものを見たような気がする。

まずもって、アメリカの寄付金額は莫大であり、個人からの寄付が占める比率が高い。2012年の総額は約3,160億ドルで、そのうちの72%が個人からの寄付となっている(Giving USA)。


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その背景には、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、マーク・ザッカーバーグといった超富裕層からの巨額の寄付があり、こうした寄付を促す税制がある一方で、キリスト教の影響や、政府に頼らず民間で事業を進めようという意識がある等々、様々な理由が指摘されている。

どのような理由で寄付・募金していたにせよ、僕が2011年の春にアメリカで見たのは、非常にまめに何度も寄付をするアメリカ人の姿だった。スーパーマーケットで買い物するたびに、レジ脇に設置された募金箱に現金のお釣りを入れていく人を見かけた。教会に行くたびに寄付している人は、恐らくほぼ毎週日曜日に少しずつ募金しているのだろう。その他、チャリティコンサートを始めとするイベントが開催されれば、そのたびにまた募金する。

いつもお世話になっていたあのアメリカ人老夫婦も、熱心に寄付をするアメリカ人の代表例だったと思う。こうした個々人の寄付行動を見れば、間違いなく彼らのことを「意識が高い」と感じるだろうし、僕自身もそう思っていた。しかしながら、よくよく話を聞いてみると必ずしもそんなことはないように感じることがあった。その最大の理由は、彼らの関心の薄さにあると言えるだろう。


確かにアメリカでは多くの人が寄付をしている。アメリカ国内の台風カトリーナ被害だけでなく、インド洋の津波やハイチ地震等の国外での自然被害に対しても(Pew Research)。

pewresearchdonation.png



しかしながら、それと同時に、多くのアメリカ人がハイチや日本のことを知らない、というのもまた事実なのである。僕の知人のそのアメリカ人老夫婦も、いまなお日本が世界地図のどこに位置しているのかさえよく分かっておらず、「東京から香港までは車で何時間かかるの?」とか真顔で聞いてきたりするわけである。

テレビも見ずインターネットも使わず、新聞購読は地元紙のみであれば、確かに国際情勢に疎くなるのは仕方ないことだとは思う。それでも不思議なのは、こうした知らない国の、さして関心もない自然被害に対して、どうしてこうもまめに寄付をするのか、ということである。

もしも彼らに明確な理由があるとすれば、それは恐らく「求められたから」ということではないだろうか。ショッピングセンターで、教会で、様々なイベントで、募金箱があったから募金した。それだけのことなのかも知れない。自然被害にあった人たちを思い心を痛める「愛」は、間違いなく彼らの中にある。しかしその一方で「無関心」であることに変わりはなく、愛と無関心が矛盾なく同居しているところに、アメリカにおける寄付活動があれだけ巨大になる理由の一端があるように思うのだ。

いわば、カジュアルに募金してくれるライトユーザー。その層の厚さが支えとなり、かつ時にはメガチャーチのような組織が極めて効率的な集金機能を担い、アメリカのチャリティを形作っている。

アメリカの寄付はすごい。確かにその通りなのだけれども、僕が本当に驚いたのは、寄付総額の巨額さでも、寄付をする個人の多さでも頻度でもなく、ましてや彼らの「意識の高さ」でもない。その反対に、彼らの無関心こそが僕にとっての最大の驚きであり関心事であったのだ。しかしながら、こうした無関心層の厚さが、アメリカからの物資・人出の派遣や被災地での救援活動等を支えているというのも、また事実なのである。



2013/11/27(水) | Others | トラックバック(0) | コメント(0)

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