翻訳を含め日本語の経済学教科書(リスト)も充実しているとは思うが、アメリカの経済学教科書は、定番書があると同時にそれを様々な角度から補完する各種 supplement が充実しているのがウレシイところ。今学期の Econometrics の授業で個人的に読み進めたのが、"Mostly harmless econometrics"。コンパクトな一冊の中に、絞り込んだ主張が盛り込まれている。曰く、現代の計量経済学の主要ツールは3つ。一つ目は、linear regression。二つ目は、IV (instrumental variables)。三つ目は、DID (Differences-in-differences)。この主張そのものに対し異論反論があるのは当然だが、あえて割り切った考え方でテキストを編集しているのは好感が持てる。
実証研究に焦点を当てているため、理論テキストでは分かりづらいところ、結局のところそのツールを「どう使ったら」いいのよ、という点が分かりやすいのが特長だ。かゆい所に手が届いている、という印象を持つ。その中でもとくに、第一章にまとめられた、"Questions about Questions" がよい。MIT教授の石井裕も指摘するように、研究を進める上では、そもそもの出発点となる「問いを立てる」ということが極めて重要になる。そして、それが「正しい問い」なのかどうかを最初にきちんと確認しておこう、という注意がこの第一章と言えよう。ツールを使う前の心構えのようなものだが、ツールそのものよりも、この構えの方が遥かに大切なことだ。だからこそ、ここで書かれていること4点を以下に抜粋し、心に留めておきたい。
1.What is the causal relationship of interests?
2.What is the experiment that could ideally be used to capture the causal effect of interests?
3.What is your identification strategy?
4.What is your mode of statistical inference?
2009/06/28(日) | Economics | トラックバック(0) | コメント(0)