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フェルメールの陰

ヨハネス・フェルメールを見ようと思い立ち、メトロポリタン美術館に向かったのだ。17世紀のこのオランダ画家の作品を最初に見たのは、2年前に国立新美術館開館記念として開催された企画展だった。フェルメール自身の作品としては「牛乳を注ぐ女」一作しかない地味な展示であったため、入館者数も少なくじっくり鑑賞できたのを思い出す。それが去年は、東京美術館でフェルメールの大規模展でしょう。驚きとともにうらやましさで一杯でした。

フェルメールは寡作の画家だ。世界に現存する彼の作品は、真贋の判定がまだつかないものを含めても30数点しかない。それが彼の名を美術史に残している一つの理由でもある。しかしそれ以上に彼の名声を高めているのは、彼の作品にしばしば見られる光の描き方である。「光の画家」と呼ばれるゆえんだ。

その彼の作品がここメトロポリタンには6点展示されている。しかし、上階最奥にひっそりとかけられた彼の作品は「眠る女」や「信仰の寓意」など、むしろ陰影の濃い作品が多かった。そして僕はそのことに少なからず、ほっとしたのだった。入館してすぐに憂鬱な気分になっていた僕にとって、このメトロポリタンは彼が光を差し込むべき場所ではないのだ。東京で見た彼の光を期待しておきながら、むしろ彼の陰を見たことに安堵し、僕はこの陰鬱な館を後にした。ここにもう一度来ることは、恐らくないだろう。




2009/09/30(水) | Art | トラックバック(0) | コメント(0)

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